送迎からバイタルチェックまで、朝の受け入れはどう進むのか?
以下は、日本の通所介護(デイサービス)で一般的に行われている「朝の受け入れ(送迎開始からバイタルチェック完了まで)」の標準的な流れです。
事業所の規模・人員体制・加算状況・地域事情により細部は異なりますが、厚生労働省の基準やガイドラインに沿ったモデルとして、現場での実際に近い手順と留意点をできるだけ具体的にまとめています。
最後に根拠・参照すべき指針も示します。
1) 当日朝までの準備
– 出欠・体調の事前確認
– 前日または当日朝、家族やケアマネジャー経由で出欠と体調の確認(発熱・咳嗽・下痢・転倒の有無、受診予定、服薬変更など)。
感染症流行期は特に詳細に聴取します。
– 変更があれば送迎ルートや車両配置を即時調整。
– リスク情報の共有
– 前回記録や主治医指示、看護職員の所見から、個別のリスク(例 血圧変動しやすい、嚥下障害で誤嚥リスク、転倒歴、酸素使用など)を朝のミーティングで全員に共有。
– 車両・備品の点検
– 車両の法定点検に加え、当日点検(燃料・タイヤ・灯火類・スロープ/リフト動作)。
– 備品の搭載確認 車いす固定具(4点固定が基本)、簡易担架やスライディングボード、毛布、防水シート、嘔吐物処理セット、ティッシュ・エチケット袋、使い捨て手袋、手指消毒液、予備マスク、血圧計・体温計・パルスオキシメーター、AED(設置事業所は持ち出し手順を定める)など。
– 人員配置と役割分担
– ドライバーと介助者(介護職員)でペアを組むのが基本。
乗降介助・見守り・観察と運転の役割を分担。
– 事業所側では看護職員が受け入れ体制(検温・血圧測定・問診)を整える。
2) ご自宅でのお迎え(乗車まで)
– 到着・ご挨拶・本人確認
– インターホン等で到着をお伝えし、転倒防止のため玄関先を整える。
– ご本人・ご家族に当日の体調を再確認(昨夜の睡眠、今朝の食事・水分、排便、痛み・だるさ、咳・痰、発熱、服薬の飲み忘れ等)。
– 持ち物確認と預かり
– 連絡帳、入浴セット、替え衣類、オムツ・パッド、内服薬(昼分・頓用)、補聴器・眼鏡・杖などを確認し、預かり品は名札やチェックリストで管理。
– 乗降介助
– 段差・階段は二人介助やスロープ併用など安全第一で。
歩行器や手すりを活用し、声かけは「何を」「どうして」を明確に。
– 車いす使用時はフットレスト・ブレーキ・体幹ベルトの確認。
必要に応じてスライディングボードやスリングリフトを使用(事業所の研修と手順に基づく)。
– 感染対策
– 送迎前後の手指消毒、場面に応じた手袋の着脱、適切なマスク着用。
発熱・咳嗽時は早期に事業所看護職員へ連絡し受け入れ可否を協議。
3) 車内での対応
– 安全確保
– シートベルトの確実な装着。
車いすは前後・左右の4点で床固定+車いす用シートベルト。
荷物は転がらないように固定。
– 急発進・急ブレーキ・急ハンドルを避け、交差点・踏切・停車時の声かけと確認を徹底。
– 車内環境
– 外気導入・定期的な窓開け換気、季節に応じた温度設定(熱中症予防、冬季の過冷却回避)。
– 観察・記録のタネ
– 乗車時から顔色や表情、呼吸、会話の様子を観察。
普段より眠そう・無口・息切れ・咳が増えた等があれば、到着時に看護職へ口頭でホットライン共有。
– 緊急時対応
– 明らかな急変(意識低下、胸痛、呼吸困難、重度の嘔吐等)があれば安全な場所に停車し、事業所に連絡、必要に応じ119番。
家族・主治医への連絡は事業所の手順に沿って行う。
4) 事業所到着後の受け入れ
– 降車・導入
– 車いす固定解除やシートベルト確認を声かけしながら実施。
段差・スロープは二人介助を基本に。
– 玄関での手指消毒・体調確認の一次スクリーニング。
靴の履き替えや名札の装着を支援。
– 受付・持ち物管理
– 出席確認、連絡帳・お薬の受け取り。
入浴希望の有無・可否(仮判断)を総務または介護職が把握し、看護へ情報連携。
– 動線と座席
– 転倒リスクや機能訓練予定を考慮して席を案内。
水分提供の前準備(嚥下リスクがあれば姿勢と飲み物の粘度に配慮)。
5) バイタルチェック(看護職員中心)
– 目的と体制
– 当日の安全(入浴・体操・機能訓練・食事)の可否判断と、急変の早期発見が目的。
配置基準に基づき看護職員(看護師・准看護師等)が中心となり、必要に応じ介護職員が測定補助。
– 測定・観察の標準項目
– 体温、血圧(座位安静後)、脈拍、呼吸数、SpO2(必要時)。
糖尿病の指示がある方は血糖測定。
疼痛スケール(NRSなど)を用いることも。
– 観察 意識レベル、顔色・皮膚の冷感/温感・発汗、浮腫、呼吸の音・努力呼吸、咳・痰、口渇や皮膚ツルゴールで脱水の兆候、皮膚トラブル(発赤・びらん)、発疹。
– 聴取(当日問診)
– 昨夜の睡眠、朝の食事・水分、排便状況、服薬の変更や飲み忘れ、転倒・打撲、痛みの部位と程度、受診・投薬の新規指示(抗生剤開始など)、いつもと違う自覚症状。
– 判定と連携
– 基準外値や普段との乖離がある場合は、再測定→看護判断→管理者・家族・主治医へ連絡。
入浴・運動・外出レク等の可否を調整。
– 感染症が疑われる場合はゾーニング(別室待機)、マスク交換、手指衛生強化、他利用者との接触を最小化。
必要に応じ帰宅・受診を調整。
– 入浴可否の目安(施設内基準の一例)
– 発熱(例 37.5℃以上、または平熱より1℃以上の上昇)、著明な血圧高値/低値、頻脈・不整脈の増悪、SpO2の低下、強い倦怠感・めまい・下痢嘔吐等がある場合は見合わせる。
個別の主治医指示や既往に基づき看護職が総合判断。
– 記録と情報共有
– 介護記録システムや紙媒体に、測定値・所見・可否判定・家族連絡内容・実施予定の変更を即時記録。
機能訓練指導員・生活相談員・介護職に口頭でも要点共有して、午前のプログラム(体操強度、個別訓練、入浴順)に反映。
6) 朝の受け入れ後の初期対応(バイタル後)
– 水分提供と服薬管理
– 嚥下機能を考慮して水分摂取を促す。
昼分の内服を預かっている場合は時間と方法を確認。
– 体調フォロー
– バイタル異常は時間をおいて再測定。
機能訓練や入浴前にも再チェックして安全性を担保。
– 事故防止
– 初期の活動で転倒しやすいため、トイレ誘導の声かけ、歩行見守り、フロアの滑り・段差確認を徹底。
7) 品質と安全を支える裏側の仕組み
– 標準手順書(マニュアル)と研修
– 送迎介助、リフト・スロープ操作、車いす固定、感染対策、急変対応(BLS/AED)、入浴前評価などの手順書を整備し、定期研修とOJTでスキル維持。
– 記録とカンファレンス
– 毎日の記録・ヒヤリハットの共有、週次カンファレンスでの振り返り。
LIFE等を活用する事業所では科学的データに基づくPDCAも推進。
– 緊急時・感染拡大時のBCP
– 感染症や災害時の業務継続計画(ゾーニング、縮小運行、代替送迎、連絡網、物資備蓄)を整備し、訓練を実施。
8) 施設による違いと、ご家族が確認すると良い点
– 送迎体制 ドライバー単独か介助者同乗か、車いす固定具・スロープの種類、緊急時の連絡体制。
– 受け入れの同線 検温場所、ゾーニングの有無、混雑・待機時間の工夫。
– 看護職の関与 バイタル測定のタイミング、入浴前評価の厳密さ、主治医連絡の迅速性。
– 記録と説明 バイタル値・入浴可否の理由を連絡帳で明確に説明してくれるか。
– 感染対策 手指衛生の徹底、換気、マスク・PPEの場面適合、発熱時の帰宅・受診フロー。
根拠・参照(何を裏づけるか)
– 介護保険法および指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令)
– 通所介護における運営基準として、利用者の心身の状況把握、必要な日常生活上の世話、機能訓練の提供、看護職員等の配置、記録の整備、緊急時対応、苦情・事故対応、個人情報・秘密保持等を定めています。
朝の受け入れでの健康状態確認・看護職員の関与・記録義務の根拠。
– 介護施設・事業所における感染対策の手引き(通所系を含む、厚生労働省/老健局等)
– 受け入れ時スクリーニング、手指衛生、マスク・手袋の適正使用、換気、発熱者のゾーニングや帰宅・受診判断、記録と連絡体制など、日常の感染対策の枠組みを示しています。
送迎時・受け入れ時の感染対策の根拠。
– 令和3年度介護報酬改定関連通知・BCP(業務継続計画)策定の義務化(厚生労働省)
– 感染症や災害時に備えた計画(平時の体制整備、訓練、物資、連絡網等)を求めており、受け入れ時の対応変更・縮小運行やゾーニング判断の体制づくりの根拠。
– 社会福祉施設等における事故防止・安全対策に関する通知・ガイドライン(厚生労働省)
– 送迎時の転倒・乗降時事故・誤薬等の防止策、ヒヤリハット共有、標準手順書の整備、研修の実施など、安全管理体制の整備根拠。
– 道路交通法・道路運送車両法および国土交通省の関連指針(車いす固定・シートベルト)
– シートベルト着用義務、車いす利用者輸送時の固定と安全確保、リフト・スロープの安全操作等が求められます。
送迎車内の安全対策の根拠。
– 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)および介護保険制度下の秘密保持義務
– 受け入れ時に得た健康情報の適正管理、連絡帳や口頭共有の取扱い、ゾーニング時の配慮などプライバシー保護の根拠。
– 入浴介助の安全に関する公的・専門的資料(厚生労働省の介護現場向け資料、日本温泉気候物理医学会等の安全指針)
– 入浴前の健康確認、循環器疾患や発熱時の入浴回避、脱水予防、浴室環境管理などの考え方。
各事業所が入浴可否基準を設ける際の参考。
補足
– バイタルの閾値(例 37.5℃など)はあくまで一例です。
平熱や既往、医師指示、日内変動を踏まえた個別判断が重要です。
– 上記は「指定通所介護」の一般像です。
通所リハビリテーション(通所リハ)では、リハ専門職との連携・評価がさらに手厚くなるなど運用に差があります。
– 事業所の質は、手順の明確さと再現性、そして記録・説明の丁寧さに表れます。
不明点は遠慮なく事業所に確認し、連携を密にすることで、安全で快適な1日が支えられます。
このように、朝の受け入れは「送迎での安全確保と観察」→「到着時のスムーズな導入」→「看護職員によるバイタルチェックと当日計画の微調整」までが一連の流れです。
法令とガイドラインに基づく標準手順を土台に、利用者一人ひとりの状態に合わせた柔軟な判断と丁寧なコミュニケーションが、安心・安全なデイサービスの鍵になります。
午前の機能訓練や個別リハビリはどんなことをするのか?
以下は、一般的な通所介護(デイサービス)で午前中に行われる機能訓練および個別リハビリ(個別機能訓練)の具体像と、その根拠をまとめたものです。
事業所の人員体制(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の配置有無)や加算(個別機能訓練加算、口腔機能向上加算、科学的介護推進体制加算など)によって内容は異なりますが、エッセンスは共通しています。
午前の機能訓練の全体像
– 位置づけ 到着後の体調確認を経て、身体・認知・口腔の三領域を「安全第一」で活性化し、午後の活動や自宅生活につながる体づくりを行います。
集団体操で全身を温め、課題に応じて個別のメニューに展開する流れが多いです。
具体的なプログラム例
– バイタル・体調チェック(到着〜10分)
・血圧・脈拍・SpO2・体温、睡眠・食事・服薬・痛みの聴取
・転倒歴の確認、当日の目標共有(例 今日は段差昇降を10回)
– ウォームアップ/関節可動域(10〜15分)
・首・肩・股・膝・足関節の軽い自動運動、肩甲帯・股関節のモビリティ体操
・タオル体操、棒体操、ゆっくりしたラジオ体操
・目的 血流促進と動く準備(ケガ予防、関節痛の緩和)
– 筋力トレーニング(15〜25分)
・下肢 椅子スクワット(反復立ち座り)、膝伸展(大腿四頭筋)、股関節外転(中殿筋)、つま先上げ(前脛骨筋)、かかと上げ(腓腹筋)
・体幹 骨盤前後傾、腹圧トレーニング、姿勢保持
・上肢 セラバンドでの水平外転・肘屈伸、握力ボール
・方法 10〜15回×1〜3セット、RPE(自覚的運動強度)「ややきつい」程度、痛みがない範囲
・器具 セラバンド、アンクルウエイト、ペダルエルゴメータ(準持久力)
– バランス訓練(10〜20分)
・静的 両脚〜前後タンデム立位、半眼閉、重心移動(平行棒や手すりで安全確保)
・動的 継ぎ足歩行、コーン跨ぎ、段差昇降、マット上の不安定課題
・歩行の中でのバランス 歩行速度の変化、方向転換、デュアルタスク(数唱しながら等)
– 移動・歩行練習(10〜20分)
・屋内歩行(杖・歩行器の適合確認)、6分間歩行の一部形(休憩を挟む)
・段差・スロープ、狭路通過、Uターン
・立位からの重心移動、足の運び(すり足の改善、歩幅の確保)
– 立ち座り・姿勢・起居動作(10〜15分)
・反復立ち上がり(CS-30テストの練習形)
・ベッド↔車椅子の移乗、寝返り、端座位保持
・椅子・便座の高さ調整の試行、実生活での安全な動き方の獲得
– 口腔・嚥下・発声(5〜15分)
・口腔体操(パ・タ・カ・ラ、ほお・舌・唾液腺マッサージ)
・嚥下準備運動(頸部・舌骨周囲のやさしい可動域、呼吸合わせ)
・昼食前の摂食姿勢確認(前屈み姿勢、足底設置)
– 認知×運動(デュアルタスク)(5〜15分)
・計算やしりとりをしながらの歩行・重心移動
・コグニサイズ(国立長寿医療研究センターの認知課題併用運動)
・目的 注意分配能力・遂行機能の刺激と転倒予防
– 生活行為(ADL/IADL)練習(10〜20分 個別中心)
・更衣、上着の着脱、靴の着脱(くつべら活用)
・買い物・配膳の模擬、洗濯ばさみ・ペグボードで手指巧緻性
・トイレ動作や入浴動作の手順練習(安全手順、福祉用具の選択)
– 休憩・水分補給・振り返り(随時)
・運動強度に応じた休息、こまめな水分補給
・転倒リスクや疼痛の再評価、ホームエクササイズの確認
個別リハビリ(個別機能訓練)の進め方
– 対象と体制
・通所介護では「機能訓練指導員」(看護師、柔道整復師、あればPT/OT/ST)が個別機能訓練を提供。
通所リハビリ(デイケア)ではPT/OT/STが中心に個別リハビリを実施。
– 初期評価と測定
・筋力(握力、下肢筋力)、柔軟性、バランス(TUG、片脚立位)、歩行能力(歩行速度、歩幅)、起居動作(反復立ち座り)、痛み、生活行為、認知・意欲、口腔機能(舌圧・パタカラ)
・住環境(段差、手すり、動線)、福祉用具の適合
– 目標設定(SMART)
・例 「4週間で反復立ち座りを10回→14回」「屋外50mの歩行を休まず可能に」「昼食前に口腔体操を3分継続」
– 個別プログラムの例
・転倒予防型 中殿筋強化+足関節背屈+タンデム立位+方向転換練習+デュアルタスク歩行
・移動自立型 立ち上がり反復→歩行器歩行→杖歩行の段階付け、歩幅拡大、段差昇降
・疼痛配慮型 痛みのない可動域から開始し、関節に優しい閉鎖性運動連鎖(CKC)、体幹安定化で膝・腰の負担軽減
・口腔機能型 パタカラ・舌運動・頬部ストレッチ、咀嚼・嚥下の事前準備、食形態・姿勢の助言(医療職と連携)
・作業療法型 更衣・トイレ・入浴動作の手順化、環境調整(滑り止め、福祉用具)
– 在宅フォロー(ホームエクササイズ)
・1日5〜15分でできる下肢筋力・立ち座り・口腔体操・歩行練習の処方
・実施状況の記録とフィードバック(LIFE等の科学的介護ツールの活用)
– 多職種連携
・看護職による体調・服薬管理、PT/OT/STによる機能訓練、栄養士による栄養・サルコペニア対策、歯科衛生士による口腔衛生、ケアマネとの目標共有
安全管理と中止基準(例)
– 運動前後のバイタル測定。
めまい、胸痛、強い息切れ、いつもと違う痛み、SpO2低下、収縮期血圧の大幅変動がある場合は中止・医療職へ報告。
– 転倒リスクの高い課題(片脚立位、段差)は手すり・並行棒・スタッフの近接介助で実施。
– 疲労蓄積を避け、間欠的に休憩と水分補給。
運動強度は「ややきつい」程度を目安に、個人差に合わせる。
こうした訓練が有効とされる根拠
– 筋力・バランス運動は転倒を減らす
・多面的な運動介入(筋力+バランス+歩行)は、高齢者の転倒発生を20〜30%程度減少させることが、Cochraneレビューや大規模メタ解析で繰り返し示されています(Sherringtonら, 2019ほか)。
– 高齢者への運動推奨(国際ガイドライン)
・WHO(2020)は高齢者に対し、有酸素活動に加え、週に3日程度のバランス訓練と2日以上の筋力トレーニングを推奨。
ACSM(米国スポーツ医学会)も類似の推奨を示し、下肢筋力とバランスの強化が歩行・起居動作・転倒予防に有効としています。
– 反復立ち座り・歩行練習の実用性
・椅子からの反復立ち上がり(CS-30等)は下肢筋力・機能的運動能力と相関し、実生活の移動能力(ADL)に直結する指標・訓練として広く用いられています(高齢者リハ領域の標準評価)。
– デュアルタスク(認知×運動)の効果
・運動と認知課題の併用(コグニサイズなど)は、実行機能や注意機能を高め、デュアルタスク歩行能力の向上と転倒リスク低減に寄与することが報告されています(Suzukiら, J Am Geriatr Soc, 2012 など国内外のRCT)。
– 口腔機能向上のエビデンス
・口腔体操や舌・唇・頬の運動は、嚥下機能の準備性向上、摂食時の安全性、食事摂取量・QOLの改善に資することが報告されています。
日本では介護保険の「口腔機能向上サービス」や学会ガイドライン(日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本老年歯科医学会)で、口腔衛生・体操・姿勢調整の重要性が示されています。
– 科学的介護(LIFE)と個別機能訓練
・厚生労働省は通所介護での個別機能訓練とアウトカム(歩行、立ち座り、口腔、栄養等)のデータ提出・フィードバック(LIFE)を推進。
評価→計画→実施→再評価のPDCAにより、ADL/IADLの維持・改善が図られることが示されています。
– 呼吸・姿勢訓練の妥当性
・横隔膜呼吸や口すぼめ呼吸、胸郭可動化は、運動時の息切れ軽減や姿勢安定に役立つとされ、呼吸リハガイドライン(日本呼吸ケア・リハビリテーション学会)にも整合します。
よくある質問へのヒント
– どれくらいの強度で?
→ 会話ができるがやや息が上がる程度(RPE 12〜13)を目安に、痛みのない範囲で。
– どれくらい続ける?
→ 1回あたり合計30〜60分程度を、休憩を挟みながら。
週2〜3回以上の継続で効果が見えやすい。
– いつ効果が出る?
→ 個人差はあるが、4〜8週間の継続で立ち座り回数や歩行安定性に変化が現れやすい。
参考・根拠(代表例)
– Sherrington C, et al. Exercise for preventing falls in older people living in the community. Cochrane Database Syst Rev. 2019.
– World Health Organization. Guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020.
– American College of Sports Medicine. ACSM Position Stand Exercise and Physical Activity for Older Adults. 2009/更新版関連文献。
– 国立長寿医療研究センター「コグニサイズ」関連研究(例 Suzuki T, et al. J Am Geriatr Soc. 2012, 多要素運動がMCI高齢者の認知機能に及ぼす効果)
– 厚生労働省 介護予防マニュアル(運動器の機能向上)、通所介護における個別機能訓練の手引き、科学的介護情報システム(LIFE)関連資料
– 日本摂食嚥下リハビリテーション学会ガイドライン、日本老年歯科医学会 口腔機能低下症ガイドライン
– 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 呼吸リハビリテーションに関するガイドライン
まとめ
– 午前の機能訓練は、ウォームアップ→筋力・バランス→歩行・起居→口腔・認知の順に安全に積み上げ、個々の目標に合わせて個別化します。
– 個別リハ(個別機能訓練)は、評価に基づくSMART目標とホームエクササイズ、多職種連携で生活に直結させるのが要点です。
– 筋力・バランス・認知・口腔の多面的アプローチは、国内外のガイドラインと研究で有効性が支持されています。
実際の内容は事業所やご本人の状態によって最適解が異なります。
見学時には「評価項目」「個別計画(目標と期限)」「安全管理(中止基準)」「在宅フォロー」の4点を確認すると、質の高いリハ・機能訓練かどうかが見極めやすくなります。
昼食・口腔ケア・入浴のサポートはどのように行われるのか?
ご質問ありがとうございます。
デイサービス(通所介護)における「昼食」「口腔ケア」「入浴」のサポートは、利用者の安全・尊厳・自立支援を重視しつつ、法令やガイドラインに沿って実施されます。
以下に、実際の流れと専門的な視点、そして根拠をまとめて詳しくご説明します。
事業所によって運用は多少異なりますが、共通する基本的な考え方と手順は概ね次の通りです。
昼食のサポート
目的
– 栄養状態の維持・改善、誤嚥や窒息の予防、自立的な食事動作の支援、食の楽しみの提供
提供前のアセスメント
– 健康状態の確認 来所時のバイタルチェック(血圧・脈拍・体温・SpO2など)と午前中の活動状況を踏まえ、食欲や体調を看護職・介護職が共有します。
– 栄養・嚥下評価 栄養スクリーニング(例 MNA-SF)、嚥下リスク評価(例 問診、EAT-10、反復唾液嚥下テストなど)、口腔状態(義歯の合っている/いない、口腔乾燥)を確認します。
– 個別配慮 食物アレルギー、宗教上の制限、糖尿病・腎疾患など医師指示が必要な治療食の有無、薬の食前・食後内服の有無を事前に把握します。
献立・調理衛生
– 献立は管理栄養士の監修または外部給食会社と連携して作成され、エネルギー・たんぱく質・塩分・水分量に配慮されます。
– 調理・配膳は食品衛生法に基づき、HACCPに沿った衛生管理で行われ、温冷適温で提供されます(誤配防止のため食札・本人確認を徹底)。
食形態の調整と嚥下対応
– 嚥下機能に応じて、常食・やわらか食・ソフト食・ミキサー食・嚥下調整食(学会分類やIDDSIに準拠)に調整します。
単純な「刻み食」は口腔内でまとまりにくく誤嚥リスクが上がるため、必要に応じてとろみ付与やゲル化でまとまりをつくります。
– 飲み物のとろみは個人の嚥下機能に合わせ、濃度を計量し、ダマの無いように調整します。
姿勢と環境整備
– 推奨姿勢は30~45度程度のリクライニングまたは安定した座位、顎は軽く引く、足底は床につける(フットレスト活用)など。
テーブルの高さ・イスの座面高を調整し、食器はすべり止めマットで固定します。
– 口腔内が乾燥している場合は、開始前に保湿や少量の水分で口腔内を湿らせます。
食事介助の要点(自立支援が原則)
– 可能な限り自力で食べられるよう自助具(太柄スプーン、滑り止め食器、注ぎ口付きコップなど)を活用。
片麻痺がある方には食器配置を工夫します。
– 介助が必要な場合は、一口量を小さく、ペース配分をゆっくり、嚥下を確認してから次の一口へ。
むせ込みがあれば直ちに中断し姿勢と食形態を再調整します。
– 会話は安全が確保できる範囲で。
笑いながらの摂食や急いだ促しは誤嚥につながるため避けます。
誤嚥・窒息時の初期対応
– 見守り体制を整え、むせや顔色変化に即応。
重度の窒息時は背部叩打法や腹部突き上げ法(状況により胸部突き上げ法)を実施し、意識消失時は救急要請と心肺蘇生の手順に従います。
日々の予防(食形態・姿勢・一口量)徹底が最重要です。
記録・連携
– 摂取量(主食・主菜・副菜・水分)や食事中のむせ、拒否、介助量、服薬状況を記録し、必要に応じて家族・主治医・ケアマネに情報共有します。
LIFE(科学的介護)を活用する事業所ではデータ連携します。
口腔ケア(昼食後)
目的
– 誤嚥性肺炎の予防、う蝕・歯周病の予防、味覚の改善、嚥下機能の維持・向上、栄養摂取の安定
実施のタイミングと場所
– 昼食後に実施するのが一般的です。
洗面台や口腔ケアスペースで、プライバシーに配慮して行います。
嚥下機能が低い方は座位を崩さずに行います。
標準的な流れ
– 手指衛生・手袋着用、個別の歯ブラシ・歯磨剤・義歯ケースを用意(共用は避ける)。
– 義歯がある方は外して義歯用ブラシで流水下で清掃し、洗浄剤に浸漬。
名入りケースで個別管理。
– 口腔内は歯磨き、歯間清掃、舌ブラシで舌苔除去、粘膜・歯肉のやさしい清拭。
うがいが難しい方は口腔用スポンジや吸引歯ブラシを用いて陰圧吸引を併用(研修修了者が安全に実施)。
– 仕上げに口腔保湿剤で乾燥を防ぎます。
必要に応じてフッ化物配合ジェル等を使用(過敏や誤嚥に注意)。
– 口腔・嚥下体操(パ・タ・カ・ラ発声、頬・舌の可動訓練、唾液腺マッサージ、嚥下準備体操)を短時間行い、機能維持を図ります。
観察・評価
– 口腔乾燥、歯肉出血、口内炎、義歯不適合、疼痛、口臭、食渣残留の有無を観察。
問題があれば歯科受診を提案し、訪問歯科や地域の歯科衛生士と連携します。
専門加算とチーム連携
– 通所介護では「口腔機能向上加算」を活用し、評価→計画→実施→モニタリングのサイクルで、歯科医師・歯科衛生士と連携した個別プログラム(概ね3か月単位)を行うことがあります。
摂食嚥下リハ(ST/OT/PT)と連携する事業所もあります。
記録
– 実施内容、観察所見、ケアの受け入れ状況、むせや咳の有無、口腔機能訓練の内容を記録し、昼食時の様子と合わせて多職種で共有します。
入浴のサポート
目的
– 清潔保持、皮膚コンディションの維持、血行促進、リラクゼーション、QOL向上。
皮膚疾患・褥瘡・浮腫などの観察機会にもなります。
開始前の評価と準備
– バイタルチェック 血圧・脈拍・体温・SpO2を測定。
高血圧の著明な上昇、発熱、動悸・息切れ、強い倦怠感などがある場合は見合わせや清拭へ切替え。
– 服薬・貼付薬の確認 ニトログリセリンなど貼付薬の取扱いは医師・薬剤師の指示に従い、入浴前に確認します。
– 皮膚・創傷の確認 創傷がある場合は防水保護や清拭対応、感染性皮膚疾患が疑われる場合は順番や浴槽を分けるなど感染対策を講じます。
– 脱衣室・浴室環境 室温を調整しヒートショック対策(脱衣室・浴室を暖める、浴槽温度は一般に40℃前後、急激な温度差を避ける)。
滑り止めマット、手すり、呼び出しベルを点検。
入浴形態
– 個浴(一般浴)、座位シャワー浴、機械浴(ストレッチャー浴・リフト浴)など、ADLとリスクに応じて選択します。
ノーリフト方針に沿い、移乗はスライディングボードやリフトを活用し、職員の腰痛予防と利用者の安全を両立します。
介助の手順(例)
– 更衣・移動 更衣はプライバシー布で配慮し、転倒リスクが高い方は2名体制で対応。
移乗時は声かけと段取り説明を行います。
– かけ湯 心臓から遠い末梢から徐々に。
急な入水を避け、血圧変動を抑制。
– 洗身・洗髪 利用者のペースに合わせ、目・耳・鼻・陰部の洗浄は丁寧に。
局所に処方された外用薬の使用タイミングは医師指示に従います。
– 浴槽入浴 時間は個別に調整(一般には10分前後)。
のぼせ・ふらつきがあれば即時休止。
会話で状態を確認しつつ常に見守ります。
– 退浴・保清後 身体をしっかり拭き、水分補給、保湿剤でスキンケア。
爪・皮膚の状態、褥瘡の兆候、皮疹、浮腫、皮膚乾燥や掻破痕などを観察します。
終了後の評価
– バイタル再測定、ふらつきの有無、疲労感、皮膚状態を確認。
必要に応じて休憩スペースでクールダウン。
ヒートショック予防として急な立ち上がりや冷風を避けます。
感染・衛生管理
– 浴槽・手すり等の定期清掃と残留塩素管理、循環式浴槽のレジオネラ症対策(水質管理・定期的な消毒・換水・フィルター清掃)。
タオルやスポンジは個別化、職員は標準予防策(手指衛生・手袋)を徹底します。
記録・連携
– 入浴可否、介助量、皮膚観察所見、異常の有無、インシデントの記録。
家族やケアマネへの情報提供に活用し、必要に応じて受診の勧奨や皮膚科・在宅医との連携を図ります。
要件を満たせば入浴介助加算の対象になります。
根拠・基準(代表例)
– 法令・基準
– 介護保険法および厚生労働省の「指定通所介護の人員、設備及び運営に関する基準」に基づき、通所介護計画に沿った食事の提供、入浴、口腔機能向上等のサービスを実施。
プライバシー保護、本人の意思尊重、記録の整備などが求められています。
– 介護報酬(令和6年度改定)における加算類 入浴介助加算、口腔機能向上加算、科学的介護推進体制加算(LIFE活用)等。
サービスの質向上とエビデンスに基づくケアが促されています。
– 栄養・嚥下・食事介助
– 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類(学会分類)」や国際基準IDDSIに基づく食形態調整が推奨。
姿勢・一口量・ペースなどの基本技術が誤嚥予防の根幹です。
– 食品衛生法改正により、HACCPに沿った衛生管理が原則義務化(給食提供の衛生と温度管理、アレルゲン管理、誤配防止など)。
– 日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドラインに、窒息時の背部叩打法や腹部/胸部突き上げ法、意識消失時の対応が示されています。
– 口腔ケア・嚥下機能
– 厚生労働省の高齢者口腔ケアや口腔機能向上に関する手引き・通知に基づき、口腔衛生管理と機能訓練を推進。
通所介護での口腔機能向上加算は、評価・計画・実施・モニタリング・専門職連携を要件としています。
– 介護職の口腔内吸引等は「喀痰吸引等研修」を修了し、登録のもとで安全に実施可能(制度化された特定行為)。
– 研究的根拠として、専門的口腔ケアの実施により高齢者の肺炎発症率が有意に低下することが国内外で報告されています(例 米山らの研究)。
– 入浴と安全管理
– 消費者庁や厚労省等は、冬季の入浴関連事故(ヒートショック等)の予防として、脱衣室・浴室の保温、急な温冷差の回避、のぼせ・立ちくらみへの配慮、見守り強化を推奨しています。
– レジオネラ症対策として、厚労省の衛生管理指針に準じた循環式浴槽の消毒・換水・残留塩素管理が求められます。
– 労働安全(ノーリフトケア)の観点から、移乗用具の活用が推奨されます。
まとめ(ポイント)
– 昼食は「評価に基づく個別化(食形態・姿勢・自助具)」「衛生管理」「誤嚥・窒息の予防と記録」が柱。
– 口腔ケアは「食後の確実な清掃・保湿」「吸引等の安全な活用」「口腔・嚥下機能訓練」「歯科専門職との連携」が鍵。
– 入浴は「入浴前後の体調評価」「ヒートショック・転倒・感染の予防」「皮膚観察とスキンケア」「記録と情報共有」を重視。
– いずれも介護保険制度の基準・加算、厚労省ガイドライン、衛生・救急の公的指針に裏づけられ、科学的介護(LIFE)によりデータに基づく質改善が進められています。
もし、具体的な事業所の設備(機械浴の有無、提供している食形態の範囲、歯科衛生士の巡回有無)や加算の算定状況が分かれば、さらにその事業所向けに踏み込んだ提案も可能です。
ご希望があれば教えてください。
午後のレクリエーションや社会交流にはどんな楽しみがあるのか?
デイサービスの午後は、心身のリズムが落ち着き、仲間との交流や趣味活動にじっくり取り組める時間帯です。
多くの事業所では「楽しさ」と「健康づくり」を両立させるレクリエーションを軸に、自然に会話が生まれ、役割や達成感を感じられるような仕掛けを用意しています。
ここでは、午後のレクリエーションや社会交流でどんな楽しみがあるのか、具体例と効果、実践のコツ、根拠となる研究知見まで詳しく紹介します。
1) 体を動かすレクリエーション
– 軽運動・体操・ゲーム運動
椅子に座って行う音楽体操、風船バレー、輪投げ、棒サッカー、ボッチャ、タオル体操、太極拳風ゆったり体操など。
楽しみながらバランス・下肢筋力・反応速度を高めます。
チーム戦にすると声かけやハイタッチが生まれ、自然に交流が広がります。
– ステップ・バランス系
オタゴ・エクササイズを参考にした足上げや片脚立ち、的当てと組み合わせた踏み台昇降など。
転倒予防に直結しやすく、回数や記録を可視化すると「前回よりできた」という成功体験が生まれます。
– 笑いの要素を取り入れた運動
笑いヨガ、ジェスチャーゲーム体操などは場が温まり、初対面同士でも距離が縮まります。
2) 頭と手先を使う活動
– 認知刺激・脳トレ
しりとり、計算・漢字クイズ、俳句・川柳づくり、地名当て、回想カードを使った連想ゲーム、パズルや間違い探し。
グループで協力して解く形式にすると会話が増え、得意分野を活かした相互支援が生まれます。
– 手工芸・制作
季節の飾りや折り紙、ちぎり絵、塗り絵、編み物、革細工、木工の簡単な組み立て、オリジナルうちわ・しおりづくり。
完成品は施設内に展示したり持ち帰って家族と共有したりでき、話題づくりにもなります。
– 園芸・栽培
ハーブやミニトマトの鉢植え、寄せ植え、収穫してのハーブティータイムなど。
土や植物に触れる感覚刺激と成長の見守りが日々の楽しみを作ります。
3) 音楽・芸術・表現
– 合唱・歌声喫茶風
昭和歌謡や童謡の合唱、リクエストカラオケ、手拍子・打楽器での伴奏、簡単なダンス。
歌は記憶を呼び起こしやすく、一体感が強くなります。
– 音楽鑑賞と回想
レコードや映像を流し、当時の思い出を語り合う。
歌手や曲のエピソードクイズも会話のきっかけになります。
– アート鑑賞・創作
名画の印刷を見て自由に感想を話す「対話型鑑賞」、季節のテーマで共同作品を作るなど。
正解のない対話は自己表現を促し、尊重される感覚につながります。
4) 回想・会話を中心にした交流
– 回想法サークル
昔の生活道具、写真、雑誌広告、給食メニューなどの資料を手がかりに、子ども時代・仕事・旅・家族の話を分かち合う。
共通点が見つかると一気に親密さが高まります。
– テーマトーク・お茶会
季節行事、好きなテレビ、健康の工夫、地域のニュースなどカードを使った話題展開。
傾聴が得意なスタッフが輪を見守り、話しやすい空気をつくります。
5) 役割や社会参加を感じられる仕掛け
– 係や担当を作る
司会係、記録係、写真係、花の水やり、掲示物づくり、道具の準備・片付けなど。
任されることで「誰かの役に立っている」という実感が生まれます。
– 作品や活動の発信
ミニ展示会、施設だよりの制作、家族向けの便り、地域のサロンや保育園への寄贈など。
外との接点が増えるほど自己効力感が高まります。
6) 地域・世代間交流や外部プログラム
– 子ども・学生との交流
折り紙教室の先生役、読み聞かせ、昔遊びの伝承。
自然と笑顔が増え、世代を超えた会話が弾みます。
– 地域ボランティア・ミニコンサート
合唱団、楽器演奏、落語・紙芝居など来訪イベント。
非日常の刺激が好評です。
– 小外出・買い物訓練
近所の公園や神社、商店街へ。
季節を感じ、地域とのつながりを保ちます。
安全配慮のうえ短時間・少人数で実施します。
7) 口腔・栄養・休憩を兼ねた楽しい時間
– おやつ作り・喫茶レク
白玉やホットケーキづくり、盛り付け、配膳を分担。
食事動作・衛生・役割分担の練習にもなります。
– 口腔体操・嚥下体操
発声(パ・タ・カ・ラ)、頬や舌の体操、唾液腺マッサージ。
お茶会前後に取り入れると習慣化しやすいです。
8) ICT・新しい体験
– タブレットの脳トレ・写真アルバム
家族写真のスライドショー、地元の昔の写真の比較、ニュースの閲覧など。
デジタルに触れる自信にもなります。
– VR・体感型ゲーム
VR旅行体験、Wiiやスイッチを使ったボウリング。
笑いが起き、協力し合う雰囲気が生まれます。
楽しさを支える運営の工夫
– 少人数グループでの協同作業やペア活動で会話を促進
– 初参加者には自己紹介カードや「話のきっかけカード」を活用
– 失敗しにくい課題設定(複数の達成基準、役割分担)で自己効力感を高める
– 認知症の方には回想素材や音楽など成功体験を引き出しやすい活動を中心に
– 視聴覚・身体機能に合わせたユニバーサルデザイン(大活字、コントラスト、段差回避)
– 安全と体調管理(強度はやや楽〜ややきつい、RPE11〜13、水分補給、休憩)
午後の時間割例(目安)
– 1330〜1410 体を動かすゲーム運動(風船バレー+踏み台)
– 1410〜1425 水分補給・口腔体操
– 1425〜1505 音楽レク(歌+打楽器)または回想トーク
– 1505〜1530 おやつ・喫茶時間(テーマトーク)
– 1530〜1550 手工芸(続き)や今日のふり返り・役割報告
– 1550〜1600 整理体操・解散準備
期待できる効果(楽しみが健康につながるポイント)
– 気分の改善と不安・孤独感の軽減。
笑いや達成感は意欲を引き出す
– バランス・筋力・持久力の維持向上による転倒リスク低減
– 認知刺激による注意・記憶・言語流暢性の維持、BPSD(行動・心理症状)の軽減
– 社会的つながりの拡大によるフレイル・うつ・要介護化リスクの低減
– 口腔機能の維持と誤嚥性肺炎予防、食欲・睡眠リズムの改善
– 役割を通じた自己効力感と生きがいの回復
根拠(代表的な研究・公的知見)
– 社会参加と健康長寿
大規模コホートのメタ分析で、社会的関係が強い人は死亡リスクが有意に低い(Holt-Lunstad J, PLoS Med 2010)。
日本のJAGES研究では、サロン等の通いの場・趣味活動への参加は要介護認定・抑うつの発生リスク低下と関連(近藤克則ら、J Epidemiol 2014以降の報告)。
– 転倒予防の運動
バランス・筋力を含むグループ運動は転倒率を低下(Sherrington Cら、Br J Sports Med 2019のシステマティックレビュー)。
オタゴ運動プログラムの有効性も確立。
– 認知刺激・認知症ケア
グループ型認知刺激療法(CST)は軽中等度認知症の認知機能と生活の質を改善(Spector Aら、Br J Psychiatry 2003; Cochrane Reviewでも支持)。
非薬物的活動はBPSD軽減に有効(Cohen-Mansfieldらのレビュー)。
– 音楽療法
認知症高齢者における音楽療法は不安・抑うつ・興奮の軽減に有効(van der Steen JTら、Cochrane 2018/2020更新)。
– 回想法
回想療法は生活の質や気分に小〜中等度の改善(Woods Bら、Cochrane 2018)。
日本でも昭和資料を用いたグループ回想の効果報告が多数。
– 園芸・自然接触
園芸療法は気分改善・生活満足度向上・社会参加の促進に寄与(Kamioka Hら、Complement Ther Med 2014; Nicklett EJらのレビュー)。
– 笑いの介入
笑いヨガ等の介入で抑うつ指標改善や血圧低下の報告(ランダム化試験を含む国内外研究)。
大阪府等の介護予防事業でも実践例と効果測定が蓄積。
– 口腔機能向上
口腔ケア・口腔体操の実施で嚥下機能改善、肺炎リスク低下(Yoneyama Tら、J Am Geriatr Soc 2002他)。
厚生労働省の介護予防事業「口腔機能向上サービス」でも推奨。
– 世代間交流
インタージェネレーション・プログラムは高齢者の幸福感・自己効力感・社会的つながりを高める(Gualano MRら、BMC Public Health 2018のシステマティックレビュー)。
– 我が国の政策的裏付け
厚生労働省は通所介護・総合事業において、運動・栄養・口腔・社会参加の複合的介入をフレイル予防の中核と位置づけ。
科学的介護情報システム(LIFE)を用いたPDCAにより、ADL/口腔/認知/栄養等の改善指標を蓄積。
効果を高める実践ポイント
– 本人の好み・得意を事前アセスメントし、選べるメニューを用意
– 成功体験を設計(簡単→やや難しいへの段階づけ、役割の多様化)
– 会話が生まれる配置(向かい合わせの小テーブル、円形配置)
– 記録と可視化(歩数・回数・作品展示・写真)で継続意欲を強化
– 医療的配慮(既往歴・服薬・痛みの確認、運動強度の個別調整)
– 感染対策と安全配慮(手指衛生、換気、スペース確保、見守り)
まとめ
午後のレクリエーションは、身体・認知・口腔・栄養・社会の各要素を一体的に楽しみながら実践できるのが最大の魅力です。
歌って笑い、体を動かし、誰かの役に立つ経験を重ねることで、「また来たい」「ここが自分の居場所だ」という感覚が育ちます。
国内外の研究や政策も、こうした“楽しさに根ざした社会参加”が健康と自立を支えることを強く後押ししています。
施設の特色や利用者の個性に合わせて、無理なく続けられる午後のひとときを設計することが、質の高いデイサービスの鍵になります。
帰り支度から送迎、連絡帳や家族への情報共有はどう行われるのか?
デイサービスにおける「帰り支度から送迎、連絡帳や家族への情報共有」の流れは、安全・確実な引き継ぎと、在宅生活を支える情報の質を高めることが目的です。
以下に、現場で一般的に行われている実務のポイントと、根拠(法令・基準・行政通知に基づく考え方)をできるだけ具体的に整理します。
1) 帰り支度の開始と基本フロー
– 開始時刻の目安 最終レクリエーションや個別機能訓練が終わる60~90分前から段階的に実施。
送迎便(第1便・第2便…)ごとに逆算して準備します。
– 体調確認(バイタル・観察)
– 血圧・脈拍・体温・SpO2(必要時)を確認。
日中と比べた変動、倦怠感、表情、呼吸状態、浮腫、脱水サイン(舌・皮膚・尿量)を看護職や介護職が確認。
– 異常があれば帰宅前に家族・ケアマネ・主治医(または訪問看護)へ連絡し、帰送の是非や受診要否を判断。
– 排泄・清潔・身だしなみ
– トイレ誘導・おむつ交換、失禁時の清拭・更衣。
皮膚トラブルの観察と軟膏処置。
– 入浴実施日は創部の状態、軟膏の塗布忘れ防止をダブルチェック。
義歯洗浄・装着、髪の整え、口腔ケア。
– 服薬の確認
– 施設内で16~17時台に内服がある場合は与薬し、内服残薬や持参薬の返却・管理を誤投薬防止手順(ダブルチェック、指差呼称、記録即時化)で実施。
– 持ち物チェック
– 連絡帳、財布・診察券(必要時)、上着・帽子、杖・歩行器、義歯ケース、眼鏡・補聴器、替えのおむつ・パッド、入浴セット、処置用軟膏、飲水ボトルなど。
– 便ごとチェックリストで「持参・返却・忘れ物ゼロ」を徹底。
– 水分・栄養
– 帰り前に飲水を促し、嚥下リスクがある方は姿勢・とろみ・一口量を個別に調整。
夕食への影響も踏まえて量を記録。
– 転倒・事故予防
– 玄関・乗降口の動線を整理し、履物の履き替えは座位で介助。
雨天・猛暑・寒冷時は上着・雨具・体温調整を配慮。
– 最終点呼と便ごとの整列
– 送迎便の名簿で点呼し、乗車順・車椅子固定順を共有。
持ち物の手渡し者・確認者を分けてヒューマンエラーを減らします。
2) 送迎の実務(乗降介助・車内安全・引き渡し)
– 出発前の準備
– 車両点検(タイヤ・ライト・燃料・スロープ作動・固定具)、清掃・消毒、車内温度の調整。
– 運転前の酒気帯び確認、運転日誌・運行表・連絡手段(携帯・PHS)の準備、緊急キット(嘔吐袋、使い捨て手袋、血圧計、簡易処置材、予備マスク・毛布・飲水)。
– 乗降介助
– スロープ・リフトの操作は二重確認。
車椅子は前後左右の固定、シートベルト・骨盤帯、頭部支持の必要性を個別に評価。
歩行者は段差の手引き、雨天時は滑り防止。
– 乗車前後のバイタル悪化・嘔気・疼痛は「運転開始前に対応」を原則とし、無理な運行を避ける。
– 車内見守り
– 送迎要注意者(てんかん歴、嚥下障害、せん妄傾向、酸素使用、気分不良が出やすい方)は添乗者が前席で目配り。
声かけ・空調調整・姿勢調整を適宜実施。
– 遅延・迂回の連絡
– 交通渋滞・天候悪化は事業所から家族へ遅延連絡。
迂回時の所要時間見込みも伝達。
– 自宅での引き渡し
– 原則は玄関先での対面引き渡し。
独居や見守り必要者は家屋内の安全域まで付き添い(契約・アセスメントに基づく)。
– 家族・受け手不在時の取り扱い(鍵の使用、待機時間の上限、緊急連絡先、ヘルパー・見守りサービス到着までの連携)は運営規程・同意書に沿って厳格運用。
– 転倒・急変時は一時的に帰送を中止し、救急・家族・ケアマネへ同時連絡、事故対応手順に従って記録。
3) 連絡帳の書き方と活用
– 目的
– 日中の状態を家族・在宅チーム(ケアマネ、訪問看護、訪問介護、主治医等)へ「簡潔かつ要点」で共有し、在宅生活の質と安全を高める。
– 記載項目の例
– バイタル(測定時刻込み)、食事摂取量・嚥下状況、水分量、排泄(回数・性状・失禁の有無)、入浴の可否・皮膚所見、機能訓練の内容と反応、レクリエーション参加、表情・睡眠・行動変化、与薬状況(飲み忘れ・変更)、創処置、事故・ヒヤリ情報、感染兆候、次回持ち物・連絡事項。
– 介助方法の工夫(立ち上がりは前傾を促すと安定、スプーンは浅めが安全等)、家族へのお願い(帰宅後2時間は水分をこまめに、など)。
– 記載の質
– 事実と所見を分ける(例 事実「昼食は全粥200g完食」 所見「嚥下良好でむせなし」)。
他利用者の個人情報は記さない。
誤記は二重線・訂正印(電子は修正履歴)。
– 電子連絡帳・ICT
– タブレットやクラウドの活用は、本人・家族の同意と情報セキュリティの確保を前提に。
写真・動画は目的限定・保管期間・閲覧権限を明確化。
4) 家族・関係機関への情報共有(電話・メール・会議)
– 優先順位づけ
– 緊急(発熱、転倒外傷、急なSPO2低下、せん妄急性化)=当日即時に電話連絡。
必要に応じ救急要請。
帰宅時に対面でも再説明。
– 準緊急(尿路感染疑い、食欲低下が持続、血圧の著明変動、褥瘡の悪化兆候)=当日中に家族・ケアマネへ電話と記録、必要に応じ訪看へ連絡。
– 共有(生活上の工夫、機能訓練の成果、福祉用具の提案)=連絡帳と定期モニタリングで周知。
サービス担当者会議で合意形成。
– ケアマネジャーへの報告
– 状態変化・サービス変更の要否は速やかに報告。
計画書見直しの材料となる週次・月次のサマリーを提出する事業所も多い。
– 医療連携
– 主治医や訪問看護とは、与薬変更・嚥下状態・創傷管理・バイタルのトレンドを共有。
必要時は「診療情報提供の同意」に基づきFAXやセキュアメールを利用。
– 個人情報の取り扱い
– 本人(または代理人)の同意範囲内で第三者提供。
緊急時・生命身体保護が必要な場合は同意なく関係機関へ連絡可能(法の例外規定)。
不特定多数が閲覧する媒体の使用は避ける。
5) 鍵の預かり・独居の引き渡し・リスク管理
– 鍵管理
– 鍵は個別封印袋・鍵管理簿で出入庫を記録。
複製・私物化は厳禁。
持ち出しは必要便に限定。
– 独居・高リスク者
– 室内の見守りはアセスメントに基づき、転倒リスクのある廊下やトイレまで付き添い。
戸締り確認、ガス・暖房の安全確認をチェックリスト化。
– 引き渡し不成立時
– 受け手がいない、体調不良、住環境の急変(断水・停電・破損)などは、原則として事業所へ一旦戻すか、代替の受け手が到着するまで待機。
ケアマネ・家族と取り決めたフローチャートに従う。
6) 送迎の契約・費用の考え方
– 通所介護における送迎は基本サービスに含まれるのが原則。
本人・家族送迎や片道のみの送迎では所定の減算が適用されることがある(自治体・改定により単位数は変動)。
– 送迎範囲や玄関内介助の可否、家屋内の付き添い範囲は、重要事項説明・契約書と個別アセスメントで明記。
危険作業(介護用以外の家電操作、金銭管理など)は原則実施しない。
7) 事例での具体
– 例1 帰りの血圧が190/100。
頭痛なし、SPO2 97%、会話明瞭。
看護が再測定し、家族へ電話。
「本日は安静と塩分注意、夜間に頭痛・胸痛・麻痺があれば救急受診を」と指示。
連絡帳に時系列で記載し、ケアマネへ情報提供。
– 例2 転倒擦過傷。
創傷を洗浄・被覆材で保護し、写真(同意済み)を添付して家族・訪看と共有。
事故報告書を作成し、再発防止策(履物変更、歩行器使用)を合意。
– 例3 送迎中に嘔吐。
安全な場所に停車、気道確保・口腔内清拭。
体調が安定せず、家族へ連絡し自宅直帰ではなく医療機関受診へ切替。
事業所が受診先へ状況説明。
8) 記録と保存
– サービス提供記録、事故・ヒヤリハット、与薬記録、送迎日誌、連絡帳の写し(電子)は、運営基準・自治体指導に沿って所定期間保存。
監査・指導・法的対応に備え、日付・時刻・署名(電子署名)を明確化。
9) 根拠(法令・基準・通知等の考え方)
– 介護保険法・指定通所介護の人員、設備及び運営に関する基準(厚生省令第38号)
– 利用者の心身状況の把握、サービス内容・結果の記録と保存、事故発生時の記録・報告、緊急時の連絡体制、居宅介護支援事業者(ケアマネ)等との連携、サービス内容の説明・情報提供義務などが規定。
帰り支度時のバイタル確認・記録、急変時の連絡、家族・ケアマネへの情報共有の制度的根拠。
– 介護給付費算定基準(厚生労働省告示・通知)
– 通所介護における送迎は基本報酬に包含され、家族送迎や片道のみ等の場合の減算取り扱いが示される。
送迎の実施・乗降介助の記録、加算・減算要件の充足のためのエビデンス作成が求められる。
– 福祉・介護現場における事故報告・対応ガイドライン(厚労省通知等)
– 転倒・誤嚥・誤薬・交通関連事故の発生時対応、家族・関係機関・行政への報告の考え方、再発防止(KYT・ヒヤリ共有)を規定。
送迎中の急変対応や引き渡し時の事故対応に準拠。
– 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)および関連ガイドライン
– 本人同意に基づく家族・関係機関への情報提供、目的外利用の禁止、安全管理措置、第三者提供のルール、緊急時の例外(生命・身体の保護)等。
連絡帳・電話・電子共有(メール・アプリ)の運用根拠。
– 高齢者虐待防止法・身体拘束等の適正化関連通知
– 権利擁護の観点から、送迎・引き渡しの際も本人意思の尊重と不当な抑制回避。
移動・固定は安全確保に必要な最小限に限定。
– 道路交通法・国土交通省の安全運転管理に関する通達
– 事業所の白ナンバー送迎でも運転者の酒気帯び確認、運転記録、車両点検等の安全管理を求める指針が順次整備。
車いす固定・シートベルト着用などの安全措置は運行管理上の必須事項。
– 感染対策に関する厚労省の事務連絡・ガイドライン
– 発熱時の対応、車内換気、手指衛生・消毒、マスクの適正使用など。
帰り支度・送迎での感染予防行動の根拠。
10) 実務上のコツ(品質・安全を高めるために)
– 送迎便ごとの「帰り支度チェックリスト」を運用し、口頭だけでなく見える化。
– ダブルチェックを「持ち物」「与薬」「車いす固定」の3点に重点配分。
– 連絡帳は「短く・具体的・行動可能な提案」を意識。
例 「夕食前に200mLの水分を2回に分けて」など。
– 重要情報は連絡帳だけに頼らず、口頭(電話・対面)で即時共有。
記録も残す。
– 鍵管理・独居引き渡し・不在時対応は契約書・同意書・運営規程で事前に明文化し、年1回以上の見直し。
– 送迎ルートの定期レビュー(季節・工事・新規入居者に応じて更新)、車内での急変訓練(年2回程度)を実施。
まとめ
帰り支度から送迎、連絡帳・家族への情報共有は、単なる「終業作業」ではなく、在宅生活への安全な橋渡しと多職種連携の中核です。
法令・基準に基づく「記録・連携・安全管理」を土台に、個別性(体調・生活背景)に合わせた運用を行うことで、事故予防とQOL向上の双方を実現できます。
なお、詳細運用は各事業所の運営規程・自治体指導で差があるため、契約・重要事項説明と最新の算定基準・通知を随時確認し、現場の手順書に反映させることが重要です。
【要約】
デイサービス朝の受け入れは、出欠・体調確認と送迎計画の調整、車両・備品点検と役割分担から始まり、自宅での体調再確認と安全な乗降、車内の安全・観察、到着後の消毒・受付・座席誘導を経て、看護職員がバイタル測定と問診で当日の活動可否を判断し、異常時は連絡・対応する。持ち物確認と管理、感染対策を徹底。車内外の急変時は安全確保のうえ事業所と連携し必要時は119番、家族・主治医へ報告。記録も行う。