訪問看護で具体的にどんな医療的ケアが受けられるのか?
以下は、日本で提供されている訪問看護で受けられる主な医療的ケアの内容と、その根拠(法律・制度・公的ガイドライン等)を整理した解説です。
実際の提供可否や頻度は、主治医の指示書、病状、事業所の体制(24時間対応の有無、対応できる医療機器の範囲、看護師の経験や特定行為研修の有無など)で変わります。
あくまで一般的な範囲としてご参照ください。
訪問看護の基本と利用の前提
– 定義と役割
– 看護師等が自宅や施設に訪問し、病状の観察、療養上の世話、医師の指示による診療の補助(処置・管理)を行います。
– 医師の「訪問看護指示書」に基づき、個別の訪問看護計画を作成し、多職種と連携して在宅療養を支えます。
– 適用保険と頻度の大枠
– 介護保険または医療保険で利用。
末期の悪性腫瘍、小児、精神疾患等は医療保険が優先される特例があります。
– 医療保険の訪問看護は原則「週3回まで」。
ただし急性増悪時や特別訪問看護指示書が出た期間、在宅人工呼吸器管理などでは増回可能です。
– 介護保険では1回の時間区分(例 20分、30~60分、60~90分)ごとに計画され、必要に応じて「特別管理加算」「緊急時訪問加算」「24時間対応体制加算」等が設定されています。
具体的に受けられる医療的ケアの内容
– 病状・全身状態のアセスメント
– バイタルサイン(血圧・脈拍・体温・SpO2・呼吸状態)の測定、疼痛・呼吸困難・浮腫・脱水・せん妄・感染兆候などの評価
– 服薬アドヒアランス、副作用の観察、転倒リスク・窒息リスク等の安全評価
– 投薬・注射・点滴・ポンプ管理
– 医師の指示に基づく皮下・筋肉内・静脈内注射
– 末梢点滴の管理、点滴速度の調整(医師の包括的指示や手順書に基づく範囲)
– 中心静脈カテーテル(CVC・ポート)ルート管理、消毒・ドレッシング交換、輸液ポンプやPCAポンプの管理
– 在宅持続皮下注(疼痛緩和、パーキンソン病治療薬など)のライン管理
– 栄養・摂食嚥下に関する医療管理
– 経管栄養(経鼻・胃瘻・腸瘻)の注入手技、チューブ固定・交換(交換の可否は材質・手順書・医師指示による)、ボタン型胃瘻の管理
– 中心静脈栄養(TPN)の無菌的管理、カテーテル感染予防
– 嚥下障害の評価、誤嚥予防の食形態・姿勢指導(STと連携)
– 呼吸管理
– 喀痰吸引(口腔・鼻腔・気管カニューレ)、ネブライザー吸入
– 気管切開部のケア、カニューレ管理・交換(医師指示と事業所体制による)
– 在宅酸素療法(HOT)の設定確認・チューブ管理・低酸素の評価
– 非侵襲的陽圧換気(NPPV/BiPAP)や在宅人工呼吸器(IPPV)の機器管理、アラーム対応、加湿・回路交換支援
– 循環・泌尿器・ストーマケア
– 留置カテーテルの衛生管理・閉塞予防・排尿量観察、自己導尿指導
– 腎瘻・膀胱瘻などの瘻孔部ケア
– 人工肛門(ストーマ)・ウロストミーの装具選定助言、スキンケア、トラブル対応
– 創傷・皮膚ケア
– 褥瘡の予防(体位変換、減圧、寝具・クッションの助言)と処置
– 手術創・外傷創の観察とドレッシング、陰圧閉鎖療法(NPWT)機器の管理
– 糖尿病足病変の観察とケア、フットケアの指導
– 糖尿病・慢性疾患の在宅管理
– 血糖測定、低血糖・高血糖時対応、インスリン自己注射の手技指導(主治医の治療方針下)
– 高血圧・心不全・COPDなどのセルフマネジメント支援(体重・浮腫・息切れのモニタリング)
– がん・緩和ケア
– 疼痛アセスメント、オピオイドの導入・副作用(便秘・悪心・眠気)対策、レスキューの使い方指導
– 呼吸困難・不安・せん妄への非薬物的介入、主治医への症状フィードバック
– 終末期(看取り)の体制整備、苦痛緩和、エンゼルケア、家族支援
– 精神科訪問看護
– 服薬支援、再発兆候のモニタリング、睡眠・生活リズムの調整、ストレス対処の助言
– 幻覚妄想・不安・希死念慮のリスク評価、地域資源との橋渡し
– 小児(医療的ケア児)への訪問看護
– 喀痰吸引、経管栄養、酸素・NPPV・人工呼吸器管理、てんかん発作時対応
– 体位・発達支援、家族への手技教育、学校・福祉と連携
– 腹膜透析(CAPD/APD)の在宅支援
– 交換手技の衛生指導、出口部ケア、腹膜炎の早期兆候の評価、機器トラブル時の初期対応
– 感染予防と在宅感染管理
– 標準予防策の徹底、手指衛生・環境整備指導、耐性菌・在宅医療機器関連感染(VAP/CLABSI/CAUTI)リスク低減
– リハビリテーション連携と機能維持
– 看護師による関節可動域訓練や嚥下体操の実施、PT/OT/STとの連携調整
– 家族・介護者支援と指導
– 介護技術(移乗・清拭・口腔ケア・排泄ケア)や緊急時対応の指導、介護負担の評価と調整
– 服薬ボックス・ツール導入、生活環境(福祉用具・住宅改修)への助言
– 緊急対応・24時間体制
– 連絡体制の整備、症状悪化時のトリアージ、必要時の臨時訪問、主治医・救急との連携
– 多職種連携・社会資源の活用
– ケアマネジャー・主治医・薬剤師・リハ・栄養・歯科・訪問介護との情報共有
– 退院調整、在宅移行支援、レスパイト・短期入所等の調整
ここまでが可能な根拠(法令・制度・通知等の要点)
– 看護師が在宅で医療的ケアを実施できる根拠
– 保健師助産師看護師法 看護師は「療養上の世話」および「診療の補助」を行う。
注射・点滴・創傷処置・喀痰吸引などは、医師の指示に基づく「診療の補助」として位置づけられます。
– 医師の訪問看護指示書 訪問看護は必ず主治医の指示書に基づき提供され、内容・頻度・緊急時の対応等が示されます。
特に状態が不安定な期間は「特別訪問看護指示書」により増回や24時間対応が可能となります。
– 訪問看護事業の基準と運営
– 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(厚生労働省令) 人員配置、記録、連携、緊急時対応、サービス提供の標準を規定。
看護師・准看護師・保健師・助産師が従事できること、訪問看護計画書の作成・評価・見直し等が定められています。
– 保険適用と算定上の枠組み(頻度・加算等)
– 医療保険(健康保険)における訪問看護療養費の算定基準 原則週3回まで。
特別訪問看護指示書がある場合、急性増悪や終末期など医療的ニーズが高い期間は回数制限を超えた訪問が可能。
中心静脈栄養、在宅人工呼吸器、気管切開、胃瘻等は「特別管理」の対象として、より密な管理が必要なケースとして扱われます。
– 介護保険(居宅サービス)における訪問看護 時間区分で単位化され、状態に応じて「特別管理加算」(例 在宅酸素、人工呼吸器、中心静脈栄養、気管切開管理、留置カテーテル、ドレーン、ストーマ・胃瘻等)が算定可能。
緊急時訪問看護加算、24時間対応体制加算も規定されています。
– 精神科訪問看護 医療保険での評価体系があり、服薬支援・再発兆候の観察・生活技能訓練等が「精神科訪問看護基本料」等の対象。
児童思春期や家族同席での支援、夜間・早朝・深夜の加算などの枠組みがあります。
– 小児(医療的ケア児)支援の推進
– 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律 医療と福祉・教育の連携推進を国・自治体の責務として明記。
訪問看護は医療的ケア児の在宅支援の中核サービスとして位置づけられています。
– ターミナル・看取りの訪問看護
– 在宅看取りに関する加算(医療保険・介護保険の評価)や、緊急時対応、主治医との連携要件が整理されています。
看護師は死亡診断書の交付はできませんが、臨死期支援・逝去時のケア(エンゼルケア)・医師連絡・家族支援を担います。
– 安全・質に関する指針
– 訪問看護記録・計画書の整備、感染予防策、医療機器管理、インシデント対応などは省令・通知・ガイドラインで定められ、都道府県の指定・監査の対象です。
実際の利用手順の概要
– 主治医・ケアマネへ相談 → 訪問看護ステーション選定 → 医師が訪問看護指示書を発行 → 初回訪問でアセスメント・計画書作成 → 定期訪問開始(必要時は24時間連絡体制) → 定期的な評価と主治医・ケアマネへの報告・連携。
– 退院前カンファレンスで、必要機器(酸素、吸引器、吸入器、栄養ポンプ等)や在宅環境の整備、家族への手技教育を事前に行うとスムーズです。
留意点
– 実施できる医療的ケアは、医師指示書と事業所の対応範囲に依存します。
例えば、気管カニューレ交換や胃瘻ボタン交換、陰圧閉鎖療法(NPWT)の管理などは、受け入れ可否が事業所で分かれます。
– 喀痰吸引や経管栄養など一部の行為は、所定の研修を修了した介護職も実施できますが、病状変化のアセスメントや医療機器の総合管理は看護師の役割が中心です。
– 医療保険・介護保険の適用や自己負担、加算要件は改定で変わります。
最新の制度情報を、ステーション・自治体・保険者・主治医で確認してください。
主な根拠・参照先(公的情報)
– 保健師助産師看護師法(e-Gov法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203
– 介護保険法(e-Gov法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000123
– 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(厚生省令第37号)(e-Gov法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411M50000004037
– 診療報酬点数表(令和6年度)・在宅医療関連(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199811.html
– 介護報酬(訪問看護)関連資料・通知(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushikaigo/kaigokoureisha/kaigohoken.html
– 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(e-Gov法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=503AC0000000071
– 厚生労働省 在宅医療・訪問看護の施策ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190990.html
まとめ
– 訪問看護では、病状観察・服薬管理から、注射・点滴・中心静脈栄養、経管栄養、呼吸管理(吸引・酸素・人工呼吸器)、カテーテル・ストーマ・創傷ケア、緩和ケア、精神科ケア、小児の医療的ケア、腹膜透析支援、感染管理、家族指導、緊急対応まで、幅広い医療的ケアが受けられます。
– これらは看護師の業務範囲(診療の補助)と、訪問看護の指定基準、診療報酬・介護報酬の算定要件(特別管理・緊急時等)により制度的に裏づけられています。
– 実施の可否・頻度・費用は、医師指示と事業所体制、保険の適用で異なるため、個別に主治医・ケアマネ・訪問看護ステーションへ早めに相談することをおすすめします。
日常生活のサポートやリハビリはどこまで対応してくれるのか?
訪問看護は「病気や障害のある方が、住み慣れた自宅で安全に暮らし続けられるよう、医師の指示に基づいて看護師等が行う在宅ケア」です。
制度上は介護保険と医療保険のいずれか(または条件により医療保険優先)で提供され、内容は「療養上の世話(生活支援)」と「医療的処置」「リハビリテーション」「家族支援」等で構成されます。
以下、日常生活支援とリハビリはどこまで対応されるのか、具体例と線引き、利用枠組み、根拠まで詳しく整理します。
訪問看護で受けられる主なサポート
– 健康状態の観察・管理
病状観察(体温・脈・血圧・呼吸・SpO2、浮腫・疼痛・食欲・睡眠など)、感染予防、再発・悪化兆候の早期発見、受診や検査のタイミング助言。
– 医療的処置・機器管理
服薬管理・副作用観察、点滴・注射、創傷ケア(褥瘡含む)、ストマ・胃瘻・膀胱留置カテーテル管理、在宅酸素・人工呼吸器・吸引、自己注射(インスリン等)や経管栄養の手技確認、疼痛コントロール、ターミナルケア。
– 療養上の世話(=日常生活支援)
体位変換・ポジショニング、清拭・部分浴・全身入浴介助、爪切り・スキンケア、口腔ケア、排泄介助・失禁対策・便秘/尿路管理、食事介助・嚥下食やとろみの調整、栄養管理、移乗・移動の介助や見守り、自主トレ支援、住環境の最低限の整え(床ずれ予防の寝具調整や感染予防の清潔保持など「療養に直結」する範囲)。
– リハビリテーション(PT/OT/STによる訪問含む)
退院直後の生活再構築、関節可動域訓練、筋力維持・廃用予防、立位・歩行・段差・屋内移動訓練、移乗・更衣・トイレ・入浴等のADL訓練、作業活動、福祉用具選定・住宅改修の助言、摂食嚥下訓練、言語・高次脳機能訓練、呼吸リハ・心不全の自己管理支援、認知症に対する生活リハと家族への対応技術指導。
– 精神・認知症・家族支援
不安・抑うつへの傾聴とセルフケア支援、服薬アドヒアランス支援、BPSD(周辺症状)への環境調整と関わり方、介護負担の軽減策、介護技術の指導、サービス調整(ケアマネや主治医、薬剤師、歯科、栄養士等との連携)。
– 24時間対応・緊急時の相談と訪問(契約・体制加算がある事業所)
「どこまで対応してくれるか」の具体的な線引き
– 生活支援(家事)と看護の境界
訪問看護は「療養上の世話」が目的です。
入浴・清潔・排泄・食事・移動などは、医療的評価やリスク管理(誤嚥・転倒・皮膚障害・心不全増悪等)を伴って看護として実施できます。
一方で「単なる家事(例 居室の大掃除、家族分の食事作り、庭の草むしり、日常の買い物や大量の洗濯など)」は原則対象外です。
これらは訪問介護の生活援助の範囲で調整します。
– 入浴介助
心肺機能や皮膚状態の評価、転倒・失神リスク管理を含む入浴なら訪問看護で実施可能。
医療的管理を伴わない日常の入浴介助中心なら訪問介護の身体介護で手配するのが基本です。
– 清掃・洗濯・調理
褥瘡や感染予防のための寝具・身辺の清潔保持など、療養上必要な最小限は訪問看護でも対応し得ます。
日常的・包括的な家事は訪問介護(生活援助)へ。
– 服薬管理
服薬スケジュールの整理、残薬調整、ピルボックス作成、効果・副作用の観察、医師・薬剤師との連携は訪問看護の中心的業務です。
一包化や配薬の仕組みづくりも含みます。
– 通院同行
原則として訪問看護の算定内では継続的な通院付添いは想定されていません。
医療上特別な必要性がある場合はケアマネ・主治医と個別調整(別算定や自費等の扱いを含む)となります。
– リハビリの範囲
医師の指示書に基づく、生活機能の維持・向上、合併症予防、再発予防、社会参加を目的とした訓練が対象です。
いわゆる慰安的マッサージのみの提供はできません(あん摩マッサージ指圧等は別制度)。
PT/OT/STが所属する訪問看護ステーションであれば、看護と一体的にリハを提供可能です。
医療機関の訪問リハ(別サービス)を選ぶ方法もあります。
– 認知症・精神科
服薬・生活リズム・金銭管理の助言、事故リスク低減、家族指導、問題行動への非薬物的対応などは訪問看護の範囲。
精神科訪問看護では再発予防のための生活支援・服薬支援・対人関係支援を計画的に実施します。
利用枠組み(回数・時間・費用の大枠)
– 介護保険での訪問看護(原則、要介護認定者は介護保険優先)
ケアマネがケアプランを作成し、主治医の訪問看護指示書に基づいて提供。
1回あたりの時間区分(例 30分未満/30分以上1時間未満/1時間以上1時間30分未満)で介護報酬が設定。
加算(初回、緊急、24時間体制、特別管理、ターミナル、複数名訪問等)あり。
月の「支給限度基準額」内で調整します。
– 医療保険での訪問看護
医師の指示書で実施。
原則は週3回までが目安ですが、特別訪問看護指示書(14日間)期間は頻回訪問が可能。
末期がん等、厚生労働大臣が定める「医療保険優先の疾病等」に該当する場合は回数制限の緩和や医療保険での継続が可能。
時間区分に応じた診療報酬で算定されます。
精神科訪問看護も医療保険の枠で提供されます。
– 訪問リハビリとの使い分け
訪問看護ステーション所属のPT/OT/STが提供する「訪問看護(リハビリ)」か、病院・診療所・老健が提供する「訪問リハビリテーション」を選択・併用(重複算定不可)します。
目的や連携のしやすさ、回数枠、通所サービスとのバランスで決めます。
実際の対応例(イメージ)
– 心不全とフレイルがある高齢者
訪問看護 バイタル・浮腫・体重のモニタリング、入浴時の循環管理、服薬・塩分水分管理、急変サイン教育、ポジショニング・清潔保持、家族指導。
訪問介護 日常の入浴介助・買い物・掃除など。
PT 息切れに配慮した歩行・階段練習、エネルギー保存の動作指導。
– 片麻痺で嚥下機能低下がある方
訪問看護 誤嚥予防の姿勢・食形態調整、口腔ケア、褥瘡・拘縮予防、服薬管理。
OT 更衣・トイレ・入浴の自立度向上訓練、福祉用具選定。
ST 嚥下訓練・摂食環境調整・言語訓練。
訪問介護 日常の身体介助・生活援助の補完。
利用開始の流れと実務ポイント
– 介護保険の方はケアマネへ相談し、主治医から訪問看護指示書を発行。
医療保険の場合は主治医に直接相談。
事業所の体制(24時間対応、PT/OT/STの有無、小児・精神対応可否、緊急時出動)を比較検討。
– 「看護でできる生活支援」と「訪問介護に委ねる家事・身体介助」を組み合わせると、回数枠や費用対効果が高まります。
– リハは目標・期間・頻度を明確化し、家でできる自主トレと再評価をセットにすると効果的です。
根拠(法令・通知・基準等の概略)
– 介護保険法
居宅サービスの一つとして訪問看護を位置づけ、「療養上の世話」および「必要な診療の補助」を規定(例 第8条等)。
要介護者は原則として介護保険で訪問看護を利用。
– 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(厚生労働省令)
人員配置、提供時間、記録、連携、緊急時対応、衛生管理など運営基準を規定。
療養上の世話の具体と、医師の指示による医療処置の範囲を示す。
– 介護報酬(訪問看護費)の算定構造(厚生労働省告示・通知)
1回の時間区分(30分未満、30分以上1時間未満、1時間以上1時間30分未満)や各種加算(特別管理加算、ターミナルケア加算、24時間対応体制加算、緊急時訪問看護加算、複数名訪問等)を規定。
PT/OT/STによる訪問看護の算定やリハビリテーション提供体制加算の取扱いも示されます。
– 医療保険(診療報酬点数表 在宅医療・訪問看護)
訪問看護基本療養費、精神科訪問看護指導料、特別訪問看護指示書(14日間の頻回訪問)の規定、原則週3回の目安、厚生労働大臣が定める「医療保険優先の疾病等」の扱い(末期の悪性腫瘍、難病、重度医療機器管理等)を定めています。
– 厚生労働省「訪問看護の提供に関するガイドライン」等
生活期における看護の具体、アセスメント、倫理・プライバシー、連携、リスク管理、終末期のケアの標準、精神科訪問看護や小児の留意点等を示す。
訪問介護との役割分担(生活援助・身体介護)との線引きの考え方も各種通知・Q&Aで整理されています。
– 訪問介護(参考)
介護保険の訪問介護は「身体介護(入浴・排泄・食事等)」と「生活援助(掃除・洗濯・調理・買い物等)」に区分。
訪問看護は医療的管理と療養上の世話が中心であり、重複算定不可・役割分担が基本です。
よくある誤解の補足
– 訪問看護は「家事代行」ではありません。
目的は医療的管理と療養上の世話・機能維持向上です。
– リハは「機能訓練+生活行為の自立」を狙う専門職の介入で、慰安目的の施術は対象外です。
– 介護保険の要介護認定者は原則介護保険が優先。
ただし、特別訪問看護指示書の期間や「医療保険優先の疾病等」では医療保険となる場合があります。
– 回数・時間・費用・加算の可否は、個々の状態、指示書、事業所体制、最新の報酬改定により変わります。
まとめ(「どこまで対応?」の要点)
– 日常生活のサポートは「療養上の世話」に該当する範囲なら広く対応(入浴・清潔・排泄・食事・口腔ケア・移動・ポジショニング・服薬管理・環境の最小整備)。
単なる家事は訪問介護へ。
– リハビリはPT/OT/STが医師指示のもとで、関節・筋力・歩行・ADL・嚥下・言語・認知・呼吸循環など、生活機能の維持向上を目的に実施。
慰安的マッサージは不可。
– 回数は介護保険ではケアプランと支給限度内で調整、医療保険では原則週3回、特別指示書で頻回、特定疾患で緩和。
– 具体的な可否は、主治医の指示内容、状態像、事業所体制、地域の運用によるため、ケアマネ・主治医・訪問看護ステーションと事前に要相談。
参考・根拠の所在(代表例)
– 介護保険法(居宅サービスの定義、訪問看護の位置づけ)
– 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(厚生労働省令)
– 介護報酬告示・通知(訪問看護費の時間区分・各種加算、PT/OT/ST関係)
– 診療報酬点数表(在宅医療・訪問看護、精神科訪問看護、特別訪問看護指示書、医療保険優先疾患の取扱い)
– 厚生労働省 作成の訪問看護ガイドライン、介護保険最新情報(Q&A)
お住まいの地域や該当する保険(介護・医療)、病状、事業所体制によって実際の運用は異なります。
具体的に「どこまでやってもらえるか」を確実にするには、主治医の訪問看護指示書で目的と内容を明記してもらい、ケアマネ・訪問看護師・(必要に応じて)PT/OT/STと事前面談で役割分担をすり合わせるのが最短ルートです。
介護者・家族への支援や相談体制はどうなっているのか?
以下は、訪問看護で受けられる「介護者・家族への支援」と「相談体制」についての詳しい説明と、その根拠です。
結論から言うと、訪問看護は患者本人への医療的ケアだけでなく、家族の不安を軽減し、介護負担を見える化し、24時間の相談や緊急対応につなぐ仕組みを制度上も運用上も備えています。
根拠は介護保険法・医療保険(診療報酬)・厚生労働省の基準や手引き、自治体の地域支援事業にあります。
家族・介護者への具体的な支援内容
– 病状・治療の説明と見通しの共有
病気の経過や合併症リスク、在宅療養のゴール(たとえば回復、維持、看取り)を、家族が理解できる言葉で説明します。
症状悪化のサイン(発熱、呼吸変化、食欲低下、転倒リスクなど)のチェックポイントを、観察表や連絡ルールとセットで渡します。
– 介護技術の個別指導
清拭・入浴介助、体位変換・移乗、経口摂取の介助、口腔ケア、褥瘡予防、排泄ケアなどを自宅環境に合わせて実地指導します。
必要な福祉用具や住宅改修の助言も行い、ケアマネジャーに連携します。
– 医療機器・服薬管理の支援
在宅酸素、吸引、胃瘻・腸瘻、留置カテーテル、人工呼吸器、インスリンなどの安全手技、トラブル時の対応、物品の補充方法を指導します。
お薬カレンダー・一包化・服薬アラートなどの工夫も提案します。
– 24時間の連絡体制と緊急対応
夜間・休日を含めた電話相談の窓口(オンコール)を設け、必要時は緊急訪問につなげます。
救急要請(119)か主治医連絡か、自己対応かの判断を支援し、家族の不安を軽減します。
– メンタルサポートとピア支援の紹介
介護者の不安・抑うつ・孤立を定期的に聞き取り、負担感の評価(例 Zarit尺度等の活用)を行い、必要に応じて地域包括支援センター、家族会、カウンセリング、精神科・心療内科等と連携します。
– レスパイト(介護休息)の調整
短期入所(ショートステイ)、通所系サービス、看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などを組み合わせ、介護者の休息日・時間を確保します。
急な用事や体調不良時のバックアップ計画も立てます。
– 退院前後の在宅移行支援
退院前カンファレンスへの参加、病院スタッフとの情報共有、物品・薬剤・ベッドなどの準備、初回訪問の早期実施を通じ、家族が「明日からどうするのか」が明確になるよう支援します。
– 生活と社会資源のコーディネート
介護保険サービス、障害福祉サービス、難病・小児慢性特定疾病、自立支援医療、高額療養費、医療費助成、住宅改修、介護休業制度(仕事と介護の両立)など、必要な制度を整理し、申請窓口や医療ソーシャルワーカーにつなぎます。
– アドバンス・ケア・プランニング(ACP)と在宅看取り支援
本人・家族が望む療養の場や治療の優先順位、延命治療の希望を事前に話し合い、記録・共有します。
在宅での看取りでは、症状緩和、当直体制、家族の役割分担、連絡体制を明確にし、看取り後のグリーフケア(遺族の心身ケア)も行います。
– 権利擁護・安全配慮
虐待や経済的搾取、服薬の逸脱などリスクを察知した場合、地域包括支援センターや主治医、自治体と連携し、家族と本人を守る支援につなげます。
転倒・誤嚥・火災等の在宅リスク対策も具体化します。
– 小児や難病など特性に応じた家族教育
小児在宅医療では、保護者への医療的ケア指導、学校・訪問看護・主治医の三者連携や、ヤングケアラーの負担軽減支援につなぎます。
難病では医療費助成や就労配慮の情報提供を行います。
相談体制の仕組み
– 訪問看護ステーションの基本体制
看護師を中心に、必要に応じて理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が配置され、管理者が品質管理と連携を統括します。
主治医の訪問看護指示書に基づき、計画書(訪問看護計画書)と報告書で情報を可視化し、家族とも共有します。
– 24時間連絡体制・緊急時訪問
24時間電話連絡への対応と、必要時の緊急訪問を行う「オンコール体制」を整備します。
体制が整っている事業所は、保険上の加算(下記参照)を算定可能で、家族の夜間不安に備える相談窓口として機能します。
– 多職種連携とカンファレンス
ケアマネジャー(介護支援専門員)が全体のケアマネジメントを担い、サービス担当者会議で家族のニーズを反映します。
医師、薬剤師、リハビリ、栄養士、歯科・口腔ケア、福祉用具専門相談員、地域包括支援センター等とICTや連絡帳で情報共有します。
– 地域の総合相談窓口
地域包括支援センターが、高齢者と家族の総合相談の入口です。
虐待防止、認知症初期集中支援、権利擁護、介護予防、家族教室、介護者交流など、包括的支援につなげます。
– プライバシーと同意
家族への情報提供や他機関連携は、本人の同意に基づきます。
本人の意思決定が困難な場合は、法定代理人や家族と合意形成を図りつつ、最善利益を優先します。
利用の流れ(家族相談の視点)
– 相談
かかりつけ医、地域包括支援センター、ケアマネジャー、訪問看護ステーションのいずれからでも相談可能。
家族のみの事前相談も一般的です。
– 評価
ご本人の病状・生活状況と家族の介護力・不安・就労状況をアセスメントし、目標と役割分担を設定します。
– 契約と計画
訪問頻度・時間帯、連絡先、緊急時フロー、家族の学習計画(手技習得目標など)を計画書に明記します。
– 実施と見直し
体調や介護負担の変化に応じて、サービスと相談体制を適宜見直します。
予定外の相談・臨時訪問も可能です。
よくある支援の具体例
– 夕方以降に発熱が出たときの判断手順(解熱剤の使用判断、今夜の受診要否、翌朝の訪問前倒し)
– 介護者の腰痛悪化に伴う移乗方法の変更と福祉用具導入
– 内服忘れが続く際の一包化と服薬カレンダー導入、薬局の在宅訪問薬剤管理との連携
– 看取り期の呼吸苦に対する家族の不安軽減(症状観察ポイント、いつ電話するか、できる緩和ケア)
こうした支援ができる根拠(制度・基準・公的文書)
– 介護保険法(平成9年法律第123号)
在宅での要介護者・要支援者に対し、心身の状況に応じた適切な介護サービスを提供する枠組みを定め、家族支援を含む「自立支援」「生活の継続」を目的としています。
訪問看護は居宅サービスの一つとして位置付けられ、ケアマネジメントを通じて家族の支援ニーズも評価・反映されます。
地域包括支援センターによる総合相談、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援は同法に基づく地域支援事業として実施されます。
– 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令)
訪問看護の人員・運営基準において、利用者の心身状況やその置かれている環境(家族の状況を含む)を踏まえた計画の作成、主治医等との連携、記録・報告、緊急時の対応体制、苦情対応・相談体制の整備が求められています。
これにより、家族への指導・相談が業務の一部として明確化されています。
– 介護報酬(介護給付費単位数表・通知、令和年度改定)
家族支援・相談体制に関連する加算として、例えば以下が規定されています。
・24時間対応体制加算(訪問看護) 24時間の連絡体制・必要時の対応を整えている事業所が算定可能
・緊急時訪問看護加算 夜間・休日等の臨時の訪問に対する評価
・ターミナルケア加算 看取り期における包括的支援と家族支援の評価
・退院・退所加算やサービス担当者会議への参加に関する評価 病院から在宅移行時の家族支援、連携カンファレンスの位置付け
これらの加算要件は、家族への説明・指導、連絡体制、記録・多職種連携を求めており、家族支援の実施根拠といえます。
– 医療保険(診療報酬点数表・通知、令和年度改定)
医療保険で訪問看護を利用する場合も、次のような評価が設けられています。
・24時間連絡体制加算 利用者・家族からの24時間相談に応じる体制
・緊急時訪問看護加算 急変時の臨時訪問
・退院時共同指導加算等 退院前カンファレンスでの家族への説明・指導
・特別管理に関する評価 医療的ケア機器の管理と家族指導の実施
これらは家族への教育・相談を伴う体制整備を前提にしており、家族支援の根拠となっています。
– 厚生労働省のガイドライン・手引き
「在宅医療・介護連携推進事業の手引き」「在宅での看取りの推進に関する資料」「認知症施策推進大綱」等では、家族を含む支援の重要性、多職種連携、24時間対応、ACP、家族教室等の実施が示されています。
訪問看護関連では、療養生活の支援、家族への指導、緊急時対応、退院支援・看取り支援の要点が明記されています。
– 地域支援事業(介護保険法に基づく市町村事業)
市町村は、介護者教室、介護者交流会、認知症家族支援、ヤングケアラー相談、虐待防止相談等を実施できます。
訪問看護はこれらと連携し、家族を地域の支援ネットワークへつなぎます。
– 労働関連法制(育児・介護休業法 等)
仕事と介護の両立支援制度(介護休業、介護休暇、所定外労働の制限等)に関する情報提供・相談先への同行は、訪問看護の社会資源調整の範囲として広く行われています。
利用時のポイント(家族の視点)
– 家族だけの相談も可能か
可能です。
初回は本人不在で家族の不安を整理する面談から始めるケースもあります。
個人情報の取り扱いと同意の範囲を事前に確認します。
– 24時間対応の有無
事業所により異なるため、夜間・休日の連絡先、折り返し時間、緊急訪問の可否・費用を事前に確認しましょう。
– 介護負担を可視化
「何が一番つらいか」「誰がいつ担うか」を文章化し、責任の偏りを避けます。
レスパイトの定期確保は早めが肝要です。
– 費用の目安
医療保険・介護保険のどちらで使うか、自己負担割合、加算の有無、交通費の取り扱いは事業所と個別に確認してください。
高額療養費等の活用も検討します。
– 連携の窓口
総合相談は地域包括支援センター、サービス調整はケアマネジャー、医療面は主治医と訪問看護が基本の三本柱です。
まとめ
– 訪問看護は、家族への教育・技術指導、24時間の相談・緊急対応、レスパイト調整、在宅移行と看取り支援、社会資源のコーディネートまで一体的に提供します。
– これらは介護保険法、厚生労働省令の基準、介護・診療報酬の加算要件、厚労省ガイドライン、自治体の地域支援事業に裏付けられています。
– 家族の不安や負担は早めに可視化し、計画書に落とし込み、多職種と共有することで、安心して在宅療養を継続できます。
具体的な制度名や加算の適用可否、運用は年度の報酬改定や自治体の実施内容によって異なります。
お住まいの地域の地域包括支援センター、かかりつけ医、担当ケアマネジャー、近隣の訪問看護ステーションに直接問い合わせると、最新の体制と使える支援策を教えてもらえます。
夜間・緊急時の対応や看取り支援は受けられるのか?
ご質問のポイントに沿って、訪問看護で受けられる夜間・緊急時の対応と看取り支援の内容、そして制度上の根拠をわかりやすくまとめます。
結論から言うと、訪問看護では「24時間の連絡・緊急訪問体制」と「在宅での看取り支援」を受けられる仕組みが整っており、診療報酬・介護報酬や厚生労働省の基準・通知で裏づけされています。
ただし、全ての事業所が同じ体制ではないため、契約時の確認が重要です。
1) 夜間・緊急時の対応で受けられるサポート
– 24時間連絡対応(オンコール)
看護師が夜間・休日を含めて電話で相談に応じ、症状の聴取・トリアージを行い、医師への連絡や臨時訪問の要否を判断します。
呼吸困難、疼痛の急増、発熱、点滴・カテーテル・胃瘻・在宅酸素・人工呼吸器等のトラブル、せん妄や不穏、出血、転倒などに対応します。
緊急時の臨時訪問
必要性が高いと判断された場合、看護師が夜間・休日でも臨時に訪問します。
訪問時は、バイタル確認、酸素投与の調整、吸引、体位調整、疼痛緩和のレスキュードーズの支援、皮下注や点滴管理、カテーテルの再固定や交換、褥瘡や創部の応急処置、機器アラーム対応などを行います。
原則として主治医の「訪問看護指示書」の範囲内(包括的指示を含む)で実施されます。
病状が生命に危険を及ぼす場合は救急搬送の判断を支援します。
主治医との連携
緊急連絡が入ると、看護師は主治医に報告し、必要な追加指示(レスキュー薬の使用、鎮静の導入、輸液の一時中止・変更など)を受けて実施します。
急な増悪で訪問回数を増やす必要がある場合は「特別訪問看護指示書」(後述)を用いて頻回訪問体制に切り替えることがあります。
対応時間と加算の考え方
早朝・夜間・深夜の時間帯は診療報酬・介護報酬上、通常時間帯より評価が高く(加算)、緊急時の臨時訪問や電話対応が制度的に位置づけられています。
なお、事業所が「24時間対応体制」を整え、利用者と個別契約を結んでいることが前提です。
2) 看取り(ターミナル期)の支援で受けられるサポート
– 事前準備(ACP アドバンス・ケア・プランニング)
もしもの時の希望(延命の可否、苦痛緩和の優先、救急搬送の要否、DNARの意向など)を、ご本人・家族・主治医・看護師で共有し、計画書や訪問看護計画に反映します。
レスキュー薬の種類と使用基準、連絡体制も明確化します。
症状緩和
疼痛、呼吸困難、咳・痰、悪心・嘔吐、不安・せん妄、倦怠感、便秘などに対して、オピオイドの適正使用と副作用対策、鎮静薬の調整、酸素・吸引・加湿、体位ドレナージ、経口摂取の工夫、皮下注ポンプやPCAの管理、輸液や栄養の見直しを行います。
がん終末期、心不全・COPD、ALS、認知症の最終段階など疾患特性に応じた個別ケアを組み立てます。
家族支援と介護技術の指導
体位変換、清拭、口腔ケア、排泄ケア、褥瘡予防、吸引の手順、レスキュー薬投与のタイミング、機器の扱いなどを丁寧に指導し、介護負担の軽減と不安低減に努めます。
夜間の不安時には電話相談、必要時の臨時訪問で支えます。
看取りのプロセスと死亡時の対応
旅立ちが近いサイン(反応性の低下、摂取量の減少、呼吸の変化、四肢冷感等)を家族と共有し、タイミングを逃さないケアを行います。
逝去時には、看護師が死後の処置(エンゼルケア)を行い、主治医へ連絡。
原則として医師が診察し死亡診断書を作成します(後述の例外的取扱いあり)。
葬儀社手配、残薬・医療機器の処理、関係機関への連絡など実務もサポートします。
逝去後はグリーフケアとしての訪問・電話フォローを実施する事業所も一般的です。
3) 実際に利用するまでの流れと確認ポイント
– 受診中の主治医に「訪問看護指示書」を発行してもらう(在宅療養中や退院時支援の一環で病院MSW・地域連携室、またはケアマネジャーが調整)。
– 訪問看護ステーションと契約時に、次を必ず確認
1) 24時間連絡・緊急訪問体制の有無と契約の内容(到着目安時間、エリア、待機方法)
2) 夜間・深夜の費用(加算の有無、自己負担割合)
3) 緊急時の具体的対応(どの症状に臨時訪問するか、救急搬送判断の基準)
4) 主治医連携の方法(夜間指示の取り方、処方更新の手順、特別指示書の迅速発行体制)
5) 看取り対応の経験と実績(年間件数、宗教・文化的配慮、家族支援の方針)
6) 使用中医療機器への対応範囲(在宅酸素、人工呼吸器、CVポート、TPN等)
7) 逝去後の支援(エンゼルケア、機器返却、グリーフケア)
4) 費用・保険適用の考え方(概要)
– 医療保険か介護保険か
末期がん等の医療的ニーズが高い場合は医療保険優先となることが多く、夜間・深夜の訪問には診療報酬上の加算が適用されます。
介護保険で利用する場合も「24時間対応体制加算」や「夜間・早朝/深夜加算」等があり、緊急時訪問や看取り期の支援を評価する仕組みがあります。
自己負担は保険種別・負担割合・加算の有無で変動します。
頻回訪問を可能にする「特別訪問看護指示書」
病状の急変・増悪やターミナル期などに主治医が発行でき、原則14日以内で訪問回数を柔軟に増やすことができます。
看取り期に症状変動が大きいときに活用されます。
5) 制度・報酬・基準の主な根拠(代表例)
– 診療報酬(医療保険)
厚生労働省「診療報酬点数表」および関連通知に、訪問看護療養費、早朝・夜間・深夜等の加算、ターミナルケアに関する評価、特別訪問看護指示書の取扱い、在宅患者訪問診療(在総管、看取り加算、在宅緊急訪問診療料等)が規定されています。
これにより、夜間や緊急時の臨時訪問、看取りに向けた集中的支援が制度的に裏づけられています。
介護報酬(介護保険)
厚生労働省「介護報酬」およびQ&A・通知に、訪問看護の24時間対応体制加算、緊急時訪問看護加算、夜間・早朝/深夜の加算、ターミナルケア・看取り関連の評価が定められています。
要介護認定下でも、夜間の連絡・臨時訪問や看取り支援が報酬上評価されます。
指定基準・運営基準
訪問看護ステーションが遵守すべき人員・運営基準は、医療保険・介護保険それぞれの指定基準として厚生労働省令・告示で定められています。
24時間対応体制を掲げる場合の要件や、緊急時の連絡・訪問に応じる体制整備が求められます。
在宅での死亡診断に関する取り扱い
厚生労働省 医政局「死亡診断書(死体検案書)作成に関するガイドライン(平成30年)」等に基づき、終末期で経過を十分に把握している主治医が、看護師等からの報告を踏まえて死亡診断書を作成できる場合があることが示されています(ただし原則は医師の診察による死亡診断。
状況により医師の訪問が必要、地域の運用も異なります)。
実務ガイド
厚生労働省「訪問看護の手引き」「在宅医療・介護連携に関する手引き」等で、夜間・緊急対応や看取り支援の具体的実務、地域連携、ACP推進の重要性が示されています。
6) 利用時の注意点と限界
– 全ての訪問看護ステーションが24時間対応ではありません。
対応エリアや人員体制に制限があります。
必ず契約前に体制を確認してください。
– 看護師は医師の指示書に基づいて医療行為を実施します。
救急薬や皮下注の運用、鎮静の導入などは指示書や処方が整っていないと迅速な対応が難しくなるため、看取り期には事前準備が不可欠です。
– 夜間・深夜の到着時間は地理条件や天候、人員状況で左右されます。
電話での一次対応(体位や内服、酸素調整等)と臨時訪問の組合せで安全を確保します。
– 費用負担は加算により増える場合があります。
高額療養費制度、負担限度額や公費(難病、障害医療、医療的ケア児等)も事前に確認しましょう。
7) よくある質問への簡潔な答え
– 夜間・緊急時の対応は受けられますか?
受けられます。
24時間連絡体制の契約を結び、症状に応じて電話助言・臨時訪問・主治医連携・救急搬送判断まで支援します。
制度上、夜間・深夜の加算があり体制整備が促されています。
在宅での看取りは可能ですか?
可能です。
ACPの合意形成、症状緩和、家族支援、逝去時のエンゼルケア、死亡診断の手配、逝去後のフォローまで一連の支援を受けられます。
報酬上もターミナル・看取りの評価が整備されています。
最後に
夜間・緊急対応と看取り支援は、訪問看護の中核機能として制度・報酬で位置づけられています。
一方で、事業所ごとに提供範囲や実績が異なります。
主治医・ケアマネ・訪問看護の三者で、緊急時対応計画(エマージェンシープラン)と看取りの方針を事前にすり合わせておくことが、いざという時の安心に直結します。
契約前に「24時間対応の有無」「到着目安」「臨時訪問の基準」「看取り経験」「費用の見込み」「逝去後の支援」等を具体的に確認しておくとよいでしょう。
参考となる公的根拠(名称の例)
– 厚生労働省「診療報酬点数表」および関連通知(訪問看護療養費、早朝・夜間・深夜加算、ターミナルケア評価、特別訪問看護指示書の取扱い、在宅患者訪問診療の看取り加算等)
– 厚生労働省「介護報酬」およびQ&A・通知(訪問看護の24時間対応体制加算、緊急時訪問看護加算、夜間・早朝/深夜加算、ターミナル関連の評価)
– 訪問看護事業所の指定・運営基準(厚生労働省令・告示)
– 厚生労働省 医政局「死亡診断書(死体検案書)作成に関するガイドライン」(平成30年)
– 厚生労働省「訪問看護の手引き」「在宅医療・介護連携に関する手引き」
これらの制度が、夜間・緊急時対応や在宅看取りを可能にする法的・報酬的な土台となっています。
もし具体的な地域や事業所名があれば、体制や費用の目安をもう少し具体化してご案内できます。
利用開始までの流れ・費用・利用条件はどうなっているのか?
以下は、日本の「訪問看護」で受けられるサポート内容、利用開始までの流れ、費用、利用条件を整理したものです。
可能な限り法令・公的資料に基づく根拠も併記します。
訪問看護で受けられる主なサポート
– 医療的ケア・観察
– 病状観察(バイタルチェック、症状変化の早期発見)
– 服薬管理・指導、インスリン自己注射の支援
– 創傷ケア(褥瘡の予防・処置)、ストーマ(人工肛門・膀胱)ケア
– 在宅酸素、気管切開カニューレ管理、人工呼吸器、吸引、ネブライザー管理
– 胃ろう・腸ろう、中心静脈栄養(ポート・CVカテーテル含む)管理
– 尿道カテーテル、ドレーン類の管理、疼痛緩和
– 感染予防・衛生管理、栄養・水分管理
– 療養上の世話・生活支援
– 清拭・入浴介助の助言、排泄・食事の支援、体位変換
– 認知症の行動・心理症状(BPSD)への対応助言
– リハビリテーション(訪問看護ステーション所属のPT/OT/STが実施する場合も含む)
– 関節可動域訓練、筋力・呼吸機能訓練、嚥下訓練、福祉用具選定助言、住宅改修助言
– 精神科訪問看護
– 病状理解・再発予防、服薬アドヒアランス支援、対人関係・生活リズムの調整、家族支援
– 小児・難病・がん末期など専門性の高い在宅ケア
– 24時間対応体制の整備、看取り支援、疼痛コントロール、多職種連携
– 退院支援・多職種連携
– 退院前カンファレンス参加、主治医・ケアマネ・訪問介護・薬局・福祉用具事業者等との連携
根拠 訪問看護は介護保険・医療保険の保険給付として定義され、「指定訪問看護の人員・設備・運営基準」(平成11年厚生省令第37号)や診療報酬点数表(在宅医療)に業務範囲・算定要件が定められています。
精神科訪問看護は診療報酬「精神科訪問看護基本療養費」に根拠があります。
利用開始までの流れ
A. 介護保険(65歳以上、または40~64歳の特定疾病の方が中心)
– 1) 申請
– 市区町村の介護保険窓口に「要介護認定」を申請(代理申請可)。
同時に地域包括支援センターに相談するとスムーズです。
– 2) 認定調査・主治医意見書
– 認定調査員の訪問調査と、主治医による「主治医意見書」作成。
– 3) 認定結果
– 要支援1・2/要介護1~5が決定(おおむね30~45日)。
急ぎの場合は暫定ケアプランで認定前から利用開始し、後日遡及給付されるケースあり。
– 4) ケアマネ選定・ケアプラン作成
– 居宅介護支援事業所のケアマネがアセスメントを行い、訪問看護を位置づけた計画を作成。
– 5) 医師の訪問看護指示書
– 主治医が「訪問看護指示書」を作成。
これに基づき訪問看護ステーションと契約し、サービス開始。
補足 有料老人ホーム・サ高住・グループホーム等の在宅系居住でも利用可能。
老健・特養など入所系施設では施設内の看護が基本で、外部訪問看護は原則不可。
根拠 介護保険法、指定基準省令、介護給付費利用手続に関する厚労省通知。
B. 医療保険(年齢に関係なく、医療的管理が主目的の場合)
– 1) 主治医に相談
– 在宅療養の方、退院調整中の方は主治医に「在宅患者訪問看護指示書」発行を依頼。
– 2) 訪問看護ステーション選定・契約
– ステーションが初回訪問で説明・同意書締結。
医療保険での頻回訪問が必要な場合は「特別訪問看護指示書」(14日間、頻回訪問が可能)を発行してもらう。
– 3) サービス開始
– 状況により24時間対応体制契約、緊急時の連絡体制を整備。
補足 難病、がん末期、在宅人工呼吸器・TPN等は介護保険の認定があっても医療保険が優先されます(給付調整)。
根拠 健康保険法、診療報酬点数表(在宅医療・訪問看護指示書の算定要件)、厚労省通知(介護と医療の給付調整)。
C. 精神科訪問看護
– 精神科主治医の「精神科訪問看護指示書」により、医療保険での利用が一般的。
地域移行や服薬継続支援が中心。
根拠 診療報酬(精神科訪問看護基本療養費)。
費用(自己負担の考え方と目安)
A. 共通の基本
– 自己負担割合
– 介護保険 原則1割、一部の所得により2~3割。
– 医療保険 年齢・所得により1~3割。
– 上限制度
– 介護保険 高額介護サービス費(負担上限を超えた分が払い戻し)。
– 医療保険 高額療養費制度(自己負担限度額を超えた分が払い戻し)。
– 交通費・材料費
– 保険給付に含まれない実費(サービス提供地域外の交通費、衛生材料の実費等)は別途請求されることあり。
事前説明・同意が必要。
B. 介護保険での訪問看護の費用感
– 介護報酬は「単位」で定められ、訪問時間区分(例 20分、30~60分、60~90分等)で基本単位が設定。
地域区分(都市部は単価が高い)や各種加算(24時間対応体制加算、緊急時訪問看護加算、ターミナルケア加算、特別管理加算、褥瘡管理、同一建物居住者調整等)で増減。
– 自己負担の目安(1割負担)
– 短時間(20~30分程度) 1回あたり数百円台後半~千円弱
– 30~60分程度 1回あたりおおむね700~1,500円程度
– 60~90分程度 1回あたり1,000~2,000円程度
– 24時間対応体制加算や緊急時訪問があると、月あたり数百~数千円の自己負担が上乗せされることがあります。
– 介護保険には「区分支給限度基準額」(要介護度ごとの月額利用上限単位)があり、プランが上限を超えると超過分は全額自己負担。
根拠 介護保険法、介護給付費単位数表(令和6年度介護報酬改定)、厚労省告示・通知。
C. 医療保険での訪問看護の費用感
– 診療報酬点数表(在宅医療)により、訪問ごとの基本点数と時間外・深夜・休日、緊急時訪問看護指示下の加算、特別訪問看護指示書期間の頻回訪問、ターミナルケアの評価等が定められています。
– 自己負担の目安(1割負担)
– 平日日中の通常訪問 1回あたり数百円~1,000円台前半
– 夜間・深夜・休日や緊急時は加算により増額(1~3倍程度になるケースも)
– 難病・重症例での頻回訪問は医療保険優先となり、介護保険より費用負担の調整・上限制度(高額療養費)が適用されやすい場合があります。
根拠 健康保険法、診療報酬点数表(令和6年度診療報酬改定)、厚労省通知。
D. 簡単な概算例(あくまで目安)
– 介護保険で週2回・各40分の訪問看護、1割負担、都市部、加算なしの場合
– 1回の自己負担 約800~1,200円 × 月8回=約6,400~9,600円
– 医療保険で週2回・各40分、1割負担、平日日中のみ
– 1回の自己負担 数百円~1,000円台前半 × 月8回=約4,000~8,000円
注 実際は地域区分、加算、材料費、交通費、負担割合(2~3割)で増減します。
見積は契約前に必ずステーションから「重要事項説明」で確認してください。
利用条件(対象者・回数・場所など)
– 医師の訪問看護指示書が必須
– 介護保険 主治医の意見書とケアプランに基づく「訪問看護指示書」
– 医療保険 在宅患者訪問看護指示書(精神科は精神科訪問看護指示書)
– 対象者
– 介護保険 65歳以上の要支援・要介護認定者、40~64歳の特定疾病(脳血管疾患、関節リウマチ、末期がん等)で認定を受けた方
– 医療保険 年齢を問わず在宅療養で医療的管理が必要な方(難病、がん末期、人工呼吸器、TPN、重度の創傷など)。
介護保険認定があっても医療保険が優先されるケースあり
– 回数・頻度
– 介護保険 医師指示とケアプランに基づき設定(原則として週回数の画一制限はないが、医療的に頻回が必要な場合は医療保険に切替・併用する給付調整が行われる)
– 医療保険 通常は週3回程度が標準だが、特別訪問看護指示書の14日間は毎日などの頻回訪問が可能。
重症例は継続的頻回も算定要件で認められる場合あり
– 利用できる居住形態
– 自宅、サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホーム、グループホーム等は原則可能
– 介護老人保健施設(老健)、特別養護老人ホーム(特養)など入所施設では原則不可(施設内の看護が提供されるため)
– 24時間対応
– ステーションとの「24時間対応体制」の契約により、夜間・深夜の電話相談や緊急訪問が可能(加算対象)
– 他サービスとの併用
– 訪問介護、通所リハ・通所介護、訪問リハ、居宅療養管理指導等と併用可。
医療保険と介護保険の「給付調整」ルールに留意
根拠 介護保険法(要介護認定・給付)、健康保険法(在宅医療の給付)、診療報酬点数表(在宅医療・精神科訪問看護)、厚労省通知(医療保険優先や特別訪問看護指示書の運用)、指定基準省令。
申し込みのコツ・よくある質問
– 最短で始めたい場合
– 退院調整室や地域包括支援センターに早めに相談。
介護保険の認定待ち期間は「暫定ケアプラン」や医療保険での先行利用ができることがある
– ステーションの選び方
– 対応範囲(24時間対応の有無、精神科・小児・がん看取りの経験)、訪問可能エリア、医療連携体制、土日・夜間体制、リハ専門職の在籍などを確認
– 費用の見積
– 重要事項説明書で、基本料金・加算・交通費・材料費・キャンセル規定・時間外料金を事前に確認
– 介護保険の上限超過
– ケアマネに相談し、優先度の高いサービス調整、医療保険への切替可否、高額介護サービス費制度の適用を検討
主な法令・公的資料(根拠)
– 介護保険法(平成9年法律第123号) 訪問看護を含む介護給付の根拠。
要介護認定、負担割合、高額介護サービス費など
– 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号) 指定訪問看護の人員・運営基準
– 介護給付費単位数表・算定に係る告示・通知 訪問看護の基本単位・加算・24時間対応加算・緊急時加算・特別管理加算等(令和6年度介護報酬改定関連)
– 健康保険法 医療保険による在宅医療・訪問看護の給付、高額療養費制度
– 診療報酬点数表(在宅医療) 在宅患者訪問看護指示書、特別訪問看護指示書、精神科訪問看護基本療養費、時間外・深夜・休日加算、ターミナルケアの評価など(令和6年度診療報酬改定)
– 介護保険と医療保険の給付調整に関する厚労省通知 難病・がん末期・在宅人工呼吸器等では医療保険を優先する取扱い
– 参考となる公的情報サイト
– 厚生労働省 令和6年度(2024年度)介護報酬改定・診療報酬改定ページ
– お住まいの自治体(介護保険課、地域包括支援センター)の公式案内
– 日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の解説資料
最後に
– 訪問看護は、病状が落ち着くまでの短期支援から、長期の生活支援・終末期の看取りまで幅広く対応します。
保険の使い分け(介護/医療)と、医師の指示書が鍵です。
– 料金は制度で枠組みが決まっていますが、地域区分や加算、24時間体制、交通費・材料費の実費で変動します。
契約前に「重要事項説明」で詳細な見積をとることを強くおすすめします。
– 具体的なご事情(疾患、年齢、居住状況、現在の主治医、希望する頻度)を教えていただければ、介護・医療どちらを優先するのが適切か、開始までの最短ルートと必要書類の整理、概算費用のモデルケースをさらに詳しくご案内できます。
【要約】
訪問看護は医師指示書に基づき自宅で病状観察、処置・機器管理、療養支援を提供。医療/介護保険で利用(条件により頻度増)。吸引・点滴・CVC/胃瘻・TPN・酸素/人工呼吸器・ストーマ/褥瘡・糖尿病・緩和・精神・小児・腹膜透析などに対応。事業所体制と病状で可否・頻度が変動。多職種連携や感染予防も実施。